お金がない

春秋花壇

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釣り好きのフィッシング

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釣り好きのフィッシング

陽子は普段からニュースに疎く、最新の話題には興味が薄い。だから2024年のフィッシング詐欺の件数が55,502件に達し、しかもその数が1月と比較して約35.3%減少したことなど、まるで関心がなかった。それでもテレビのニュースで「フィッシング」という言葉が耳に入った時、彼女の頭に浮かんだのは釣りのことだった。

「また釣りの話か。最近のテレビ番組は本当に釣りが好きだね」
陽子はそう呟きながら、スマホを手に取った。彼女の中でフィッシングとは、魚を釣ること以外の何物でもなかったのだ。彼女が小さい頃、父親と一緒に行った釣りの思い出が蘇ってきた。小さな川辺で釣り糸を垂らし、のんびりと過ごす時間。それが陽子にとっての「フィッシング」だった。

その夜、友人の美咲からメッセージが届いた。美咲はニュースや世間の出来事に敏感で、よく陽子に最新の情報を教えてくれる。メッセージには「最近のフィッシング詐欺に気をつけてね」と書かれていた。しかし、陽子はそれを見て、「釣りで詐欺ってどういうこと?」と笑って返信した。

「陽子、本気で言ってるの?」
美咲は半ば呆れたように返事を送ってきた。どうやら陽子が思っている釣りとは全く異なるものらしい。美咲はすぐにフィッシング詐欺について説明を始めた。

「フィッシング詐欺っていうのは、偽のウェブサイトやメールで個人情報を盗む行為のことよ。例えば、銀行やクレジットカード会社を装って、ユーザーにパスワードやクレジットカード情報を入力させるの」
美咲の説明を読んだ陽子は、ようやく事の重大さに気づき始めた。自分が思っていた「フィッシング」が、こんなにも危険なものだとは夢にも思わなかった。

「え、じゃあ本当に詐欺なの?」
陽子は驚きながら返信した。これまで「フィッシング」という言葉を聞いても、自分には無関係だと思っていたが、実は日常の中に潜む脅威であったことに気づく。

「そうよ。特にイオンカードをかたる詐欺が急増していて、全体の約25.7%を占めているんだから、陽子も気をつけてね」
美咲の警告に、陽子は少し不安になった。自分もいつ被害に遭うか分からないという現実が急に迫ってきたのだ。特に彼女はオンラインショッピングが好きで、頻繁にクレジットカード情報を入力している。少しでも油断すれば、自分の情報が簡単に盗まれてしまうかもしれないと考えると、怖くなった。

「私もちゃんと調べてみるよ。ありがとう、美咲」
陽子はそう返して、インターネットで「フィッシング詐欺」のことを調べ始めた。初めて見る情報の数々に、彼女は驚きと同時に恐怖を感じた。個人情報の漏洩や不正利用の事例が次々と出てきて、自分も注意しなければと思った。

「釣りっていうのは、楽しいものであるべきだと思ってたけど…」
陽子はそう呟きながら、画面に映る偽のウェブサイトの例を眺めた。その見た目は本物そっくりで、一見して偽物だとは分からない。陽子は改めて、こういった詐欺がいかに巧妙であるかを実感した。

次の日、陽子は出勤途中の電車の中でもフィッシング詐欺について調べていた。これまでの自分の無防備さを恥じると同時に、少しずつでも自分を守る方法を学ぼうと決意していた。職場に着くと、同僚たちにもその話をして、注意を促した。

「フィッシングって本当に釣りのことじゃないんだよね。私も昨日まで全然知らなかったけど、みんなも気をつけたほうがいいよ」
陽子の言葉に、同僚たちも興味を持ち始め、スマホでフィッシング詐欺のことを調べ始めた。

その日の夕方、陽子は帰宅すると、父親の写真を見つめた。幼い頃、釣りを教えてくれた父親のことを思い出しながら、こう考えた。

「本当の釣りは、自然と向き合い、心を穏やかにするものだったのに…」
陽子はそんな思いを抱えながら、改めてデジタルの世界が抱える危険とどう向き合うべきかを考えた。これからは、自分自身を守るためにも、情報に敏感でいようと決意した。デジタルの海で何が潜んでいるか分からないからこそ、しっかりとした知識を身につけて、無防備なままの自分でいるわけにはいかないと心に誓ったのだった。

その後、陽子はフィッシング詐欺に関するセミナーにも参加し、さらなる知識を身につけていった。周りの人たちにもその情報を伝え、少しずつでも被害を減らしていくことを目指した。釣り好きな陽子だからこそ、その「フィッシング」に巻き込まれないよう、慎重な行動を心がけるようになったのである。










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