お金がない

春秋花壇

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疑念のフィットネス

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疑念のフィットネス

佐藤真奈美は、健康志向が高まり、長らく入会を検討していたスポーツジムに遂に足を運ぶことにした。長いデスクワークの疲れを解消し、運動不足を解消するために一念発起したのである。彼女は友人から勧められた、新しくオープンしたばかりのジム「フィットネス・パラダイス」を訪れた。

入口を通り抜けると、明るく清潔な空間が広がり、最新のトレーニングマシンが並んでいた。受付に近づくと、親切そうなスタッフが笑顔で迎えてくれた。

「こんにちは。ジムの入会をご希望ですか?」

「はい、そうなんです。体験コースを試してみたいと思って。」

スタッフはパンフレットを渡し、入会手続きの流れを丁寧に説明してくれた。真奈美は手続きを進めるためにカウンターに座り、必要な書類に記入を始めた。すると、スタッフが銀行口座の情報が必要だと伝えてきた。

「こちらに銀行口座の情報をご記入ください。それと、この機械でカードをスキャンして、暗証番号もこちらの欄に記入してください。」

真奈美は一瞬、手が止まった。銀行のカードと暗証番号?そんなことをジムの入会手続きで求められるのは聞いたことがなかった。

「暗証番号も必要なんですか?」と、真奈美は疑問を口にした。

スタッフはにこやかに頷いた。「はい、こちらのシステムでは口座情報と暗証番号を登録することで、毎月の会費を自動的に引き落とすことができます。これにより、会費の支払いを忘れる心配もなくなりますので便利ですよ。」

しかし、真奈美の心には不安が芽生えていた。暗証番号を記入するなんて、いくら便利だと言われても普通ではないのではないか、と。彼女は慎重に尋ねた。「この手続き、他の会員さんもみんな同じようにされていますか?」

スタッフは少し驚いた様子だったが、すぐに笑顔を取り戻した。「もちろんです。当ジムでは全ての会員に同じ手続きをお願いしています。」

それでも真奈美の疑念は晴れなかった。彼女は再度パンフレットを確認し、細かい字で書かれた利用規約を読み始めた。そこには、支払い方法についての記載があったが、暗証番号の記入については一切触れられていなかった。

「少し考えさせてください」と言い、真奈美はその場を離れた。ジムの外に出て、スマートフォンで「ジム 入会 暗証番号」で検索してみた。いくつかの掲示板やブログ記事を読むと、どの記事も暗証番号を記入させるような手続きは普通ではないと書かれていた。

真奈美はすぐに決心した。これは怪しい。彼女は再びジムに戻り、受付のスタッフに言った。「申し訳ありませんが、入会を見送らせていただきます。暗証番号を記入するのは不安です。」

スタッフは少し困惑した表情を見せたが、無理強いはしなかった。「かしこまりました。また機会があれば、ぜひお越しください。」

帰り道、真奈美は自身の判断に安心感を覚えた。後日、友人にその出来事を話すと、友人も驚き、彼女の判断を称賛した。

数週間後、ニュースで「フィットネス・パラダイス」が詐欺事件に関与しているとの報道が流れた。ジムは会員の銀行情報を不正に利用し、口座から金を引き出していたのだ。真奈美はぞっとしながらも、自分の慎重な判断が正しかったことに胸をなでおろした。

真奈美はその後、別の信頼できるジムに入会し、健康な生活を始めることができた。今回の経験を通じて、彼女は自分の直感と疑念を大切にすることの重要性を学んだのであった。

エピローグ
真奈美はその後も、何事にも疑問を持ち、自分の直感を信じることを心がけた。彼女は自分の安全を守るために、どんな小さなことでも慎重に確認することを忘れなかった。ジムでの経験は、彼女にとって一つの教訓であり、今後の人生においても大切な指針となったのである。








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