お金がない

陽介の悪夢

陽介の悪夢

陽介は26歳の会社員だった。毎月の給料はぎりぎりの生活費に消えてしまい、将来への不安が募るばかりだった。そんなある日、SNSで「月収100万円以上」を謳うアカウントに目を奪われた。華やかな写真とともに投稿される成功の証が、彼の心を揺さぶった。

「こんな生活、俺もできるかもしれない」

そのアカウントからDMが届いたのは、陽介が無意識にフォローしてから数日後のことだった。「投資で成功する方法、興味ありませんか？」と書かれたメッセージに、陽介は胸を高鳴らせながら返信した。

「興味あります！ぜひ教えてください」

メッセージのやり取りが始まると、相手は自称「成功投資家」のKと名乗った。Kは丁寧に投資の基礎を教え、少額の投資から始めるよう勧めた。最初の投資額は1万円だった。

「簡単なステップを踏むだけで、利益が出るんです」

Kの指示通りに投資を始めた陽介は、初めての投資で1万5千円のリターンを得た。この成功体験が彼の欲望をさらに煽った。

「もっと大きな額を投資すれば、もっと儲かるんじゃないか？」

陽介は貯金の10万円を次の投資に回した。Kのアドバイス通りに行動すると、再び2万円の利益が出た。陽介の心は高揚し、さらに大きな額を投資することを決意した。

「この調子でいけば、すぐに借金も返せるし、贅沢な生活が待っている」

陽介は全財産の50万円をKに託した。しかし、今度は利益が出るどころか、投資額が全て消えてしまった。Kに連絡を取ろうとしても、返事は一切なかった。

「どうなってるんだ？おかしい……」

陽介は焦りと不安に駆られ、何度もKにメッセージを送った。しかし、Kからの返信はなく、アカウントも削除されていた。陽介はようやく自分が詐欺に遭ったことに気づいた。

「全部……なくなった……」

全財産を失った陽介は、深い絶望に陥った。友人や家族にも相談できず、一人で苦しむ日々が続いた。夜も眠れず、食事も喉を通らない。心の傷は深く、陽介は生きる希望を失いかけた。

「なんでこんなことに……」

ある日、陽介は偶然出会った同僚の美咲に、全てを打ち明けた。美咲は親身になって話を聞き、励ました。

「陽介さん、大丈夫。もう一度やり直せるよ」

美咲の言葉が、陽介の心に希望の光を灯した。彼は過去の失敗を教訓に、冷静に状況を分析し、新たな一歩を踏み出す決意をした。

「もう一度、やり直すんだ」

陽介は再び自分の力で未来を切り開くため、慎重に情報を集め、投資の本質を学び始めた。美咲の支えもあり、少しずつ前進することができた。

「今度こそ、本当に成功するんだ」

陽介は新たな目標を見つけ、SNSやインターネットの情報に対する慎重な姿勢を持ちながら、自分の力で未来を切り開いていった。

メッセージ
この小説を通して、読者に伝えたいことは明確だ。SNSの情報を鵜呑みにせず、高額な利益を保証する投資には注意すること。そして、経済的なトラブルに巻き込まれた場合、一人で抱え込まずに相談することの重要性を認識してほしい。

この小説が、読者の皆様にとって、投資詐欺の危険性に対する意識を高める一助となれば幸いです。