お金がない

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
409 / 965

詐欺事件の裏側

しおりを挟む
詐欺事件の裏側

静かな昼下がり、阿部真理子は自宅のリビングでゆっくりと紅茶を飲んでいた。彼女は主婦として穏やかな日々を過ごしていたが、最近彼女の生活は不安と緊張に包まれていた。理由は、息子の大学費用をどうにかしようと、SNSで出会った「投資アドバイザー」の提案に乗ったからだった。

そのアドバイザー、青木健司は、自信に満ちた口調で彼女に投資のチャンスを語りかけた。初めは彼の言葉に半信半疑だったが、青木の巧みな話術と豊富な情報に惹かれ、少しずつ信頼を寄せていった。しかし、投資額を増やすにつれ、彼女は次第に警戒心を抱くようになっていた。特に、青木が口にする「絶対に損はしない」という言葉が、逆に彼女の不安を煽っていた。

ある日、真理子の元に青木から一通のメールが届いた。メールには、最新の投資成果とともに、新たに「大きなチャンス」が訪れていることが書かれていた。その内容は、彼女の貯金全額を投入することで、今までの投資額を大きく上回るリターンが見込まれるというものだった。青木は、「もう一度だけチャンスを見逃すな」と真理子に強調した。

真理子はそのメールを何度も読み返し、悩みながらも決断を下した。彼女は自分の将来と息子のために、最後の希望を託すことにした。その日の夜、彼女は全ての貯金を振り込み、青木に連絡をした。すぐに投資の証明が送られたが、心の奥底には不安が残っていた。

数週間後、真理子の不安は現実となった。青木からの連絡が突然途絶え、彼女の投資先のウェブサイトも消えていた。真理子は動揺し、警察に相談したが、彼女の投資が詐欺だったと判明するのは時間の問題だった。青木はすでに足がつかないように姿を消していた。

警察による調査が進む中、真理子は他の被害者たちと連絡を取り合い、互いの経験を共有した。彼女たちは青木の詐欺行為がいかに巧妙で、そして無慈悲であるかを知った。SNSを利用した詐欺は、被害者の信頼を巧みに操り、彼らの資産を奪う手法が急増していた。真理子は自らの経験を元に、他の人々に警戒心を持つよう呼びかける活動を始めた。

彼女の声は次第に広がり、メディアにも取り上げられるようになった。被害者としての苦しい経験を語りながらも、真理子は詐欺の手口とそのリスクについて啓発を続け、少しでも多くの人が同じ過ちを犯さないようにと尽力した。

真理子の活動が実を結び、地域社会での詐欺被害が少しずつ減少していった。彼女の辛い経験は、誰かの警戒心を呼び起こし、また同じような被害者を救う一助となった。詐欺の裏に隠された冷酷さと、その被害を食い止めるための戦いは、彼女の人生に新たな意味を与えるものとなった。

詐欺の被害にあった一人の女性の視点を通じて、SNSを利用した投資詐欺の現状とその対策について考察する短編小説です。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

ぽっちゃりOLが幼馴染みにマッサージと称してエロいことをされる話

よしゆき
恋愛
純粋にマッサージをしてくれていると思っているぽっちゃりOLが、下心しかない幼馴染みにマッサージをしてもらう話。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

始業式で大胆なパンチラを披露する同級生

サドラ
大衆娯楽
今日から高校二年生!…なのだが、「僕」の視界に新しいクラスメイト、「石田さん」の美し過ぎる太ももが入ってきて…

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...