お金がない

損をする金貸し

損をする金貸し

かつて、古きヴェニスの街角に、シャイロックという金貸しの男がいた。彼は冷酷で厳格な男だったが、その裏には苦しみと孤独が隠されていた。彼の店には、金を借りに来る者たちの悲鳴が絶え間なく響き渡る。しかし、ある日、一人の若者がシャイロックの店に訪れた。

その若者の名はアントニオ。彼は商人であり、友情を大切にする男だった。シャイロックは彼に対して特別な感情を抱いていた。アントニオは度々金を借り、取引を行っていたが、ある時期から彼の商売はうまくいかなくなり、借金を返すことができなくなった。

シャイロックは機会を伺っていた。彼はアントニオに厳しい条件を課し、もし借金が返済されない場合は身体に対する代償を要求すると告げた。アントニオは友人たちに助けを求めるが、結局シャイロックとの契約を避けることはできなかった。そして、彼は運命を受け入れた。

時間が経ち、アントニオは約束の日が迫る中、ある出来事が起こった。彼は敵対する商人との取引で大金を手に入れ、借金を返す準備を進めていた。シャイロックの元を訪れた彼は、金を返済しようとしたが、シャイロックは表情を曇らせた。

「契約は守らねばならない。私は法の下で正しい行動をとらねばならない」と、シャイロックは冷酷に言った。

アントニオは必死で取引を説得しようとしたが、シャイロックの心は動かなかった。彼は法と正義を盾にしてアントニオの悲劇を受け入れる決断をした。

しかし、奇跡的なことに、アントニオの友人たちが彼のために奔走し、最終的にはシャイロックも法のもとでその契約を破棄することを余儀なくされた。彼は金を取り戻したが、その代わりに大きな名誉と友情を手に入れた。

シャイロックは法によって敗北したが、その心には深い傷が残った。金貸しとしての彼の存在は損をしたが、同時に彼は自らの冷徹さと孤独を噛みしめることとなった。彼は生涯、その出来事を忘れることはなかった。


小さい時、我が家は金貸しだった。借りた人の子供の方が貸す側の我が家の私の洋服よりもいいものを着ていた。母が、父に証書を見て、「期限が来てますが」というと、「そりゃあお前、ないから借りにくるんであれば返しに来るさ」と父はの給う。子供心に理不尽だと思った。母は、昼間は百姓、夜は料理屋で寝る間を惜しんで働いているのに。借りた人は親子で楽しそうにご飯を食べている。

大人になって置屋に住み込みで芸妓として働いた。

日曜もなしに働きづくめに働いて、お金をためた。

独居老人になった母を引き取り、弟の大学院のお金まで出して、爪に火をともすようなつましい生活だった。主人と出会い、仕事を辞めたのだが、貯めたお金で家を買った。ところが、何年もしないうちに母がすい臓がんで身罷り、買った家も主人の結婚前の連帯保証人の一件で抵当に取られてしまう。親を失い、家も失ってわたしは無一文で二人の子供を抱えて世間の荒波に放り出されてしまう。

「借りた金くらい返せよ!!」

「貸すなら、返ってこないと思って貸せ!」

そんなことを言っているから、父はずーと貧乏だったんだろうなと思う。

ベニスの商人なんて、貸す側も借りる側も嫌いだ―。