お金がない

アパートの更新料

林太郎は、ひざまずいて机に顔を伏せた。薄暗い部屋には、薄いカーテン越しに差し込む夕暮れの光が、部屋を静かに照らしていた。机の上には、白い光が反射して請求書の数字が浮かび上がる。林太郎の肩にかかる重みは、その数字の影によってさらに増すかのように感じられた。

部屋の隅には、古びたノートパソコンが置かれている。その表面には、細かな傷や汚れが目立つ。しかし、林太郎にとっては、このパソコンが最後の頼みの綱であった。彼はそのパソコンを見つめ、決意を込めた表情を浮かべる。

部屋の中には、沈んだ雰囲気が漂っていた。壁にはひびが入り、古びた家具が雑然と置かれている。林太郎の周りには、日常の生活が忘れ去られたような静寂が広がっていた。

しかし、その静寂を破るように、林太郎の心の中には決意が芽生えていた。彼は立ち上がり、部屋を見渡す。そして、その決意を実現するために、一歩を踏み出そうとした。


アパートの更新料

第一章：絶望の淵

林太郎は、こぶしを強く握っている。何とも自分の状態が情けなかった。目の前の請求書には、アパートの更新料、火災保険、保証会社、事務手数料　合計9万円という恐ろしい数字が大きく印刷されていた。家賃、水道代、電気代… 支払い期限はとうに過ぎ、もう滞納料金も加算されている。

更新料は2年に一度、保証会社は毎年。

壊れたシャワーを恨めしそうに眺めてる。
今月は、自転車のチェーンが壊れて修理代が7500円、すでに消えている。

「ふーーー」

深く深くため息をついた。

ご近所は、建売でローン返済している家ばかり。

ちゃんと結婚して子供もいて車もある。

この違いは何だろうと思う。

2棟建った新築の建売、庭なし6850万円も完売。

「俺とどこが違うんだろう……」

林太郎は、フリーランスのライターとして働いていた。しかし、最近は仕事が減り、収入は激減していた。貯蓄も底を尽き、借金も積み重なっていた。

彼は、ため息をつき、請求書をぐしゃぐしゃに丸めた。どうすればいいんだろう？ お金なんて、どこにもない。

第二章：希望の光

林太郎は、絶望に打ちひしがれながらも、なんとか立ち上がろうとした。このままではいけない。何かしなければならない。

彼は、部屋を見渡した。そして、机の上にある古いノートパソコンに目が留まった。

「そうだ。まだ仕事があるんだ。」

林太郎は、パソコンを起動した。そして、未完成の小説原稿を開いた。

彼は、小説家になる夢を捨てていなかった。いつか、自分の書いた小説が出版されることを夢見ていた。

第三章：苦難の道

林太郎は、小説執筆に没頭した。食事も睡眠も忘れて、ひたすら書き続けた。

しかし、思うように筆は進まなかった。9万円という借金が、林太郎の心を重く圧迫していた。

それでも、彼は諦めなかった。夢を叶えるためには、この苦難を乗り越えなければならない。

稚拙な文章とキャラクター設定。

時系列とプロット。

何一つわかっちゃいない。

何度読んでも頭に入ってこない。

できることを探せ。

せめて語彙だけでも日本語検定の過去問をみる。

日本語検定（にほんごけんてい）は、知識と運用能力を測定する日本語の語学検定。

一級をとれたからって金になる小説が書けるわけじゃないんだけどな。

小さな成功体験が欲しかった。

今にもぽっきりと折れてしまいそうな心の添え木にするために。

第四章：奇跡の瞬間

数週間後、林太郎はようやく小説を完成させた。彼は、出版社に原稿を送った。

親切な編集者さんに教わりながら、何度も手直しをした。

その度に、彼の自己肯定感のなさがあらわにされる。

全部まとめて、なかったことにしたい。

だけど、更新料が……。

あの太宰治先生でさえ、土下座をした生き馬の目を抜く世界。

「敵は己の中にあり」

気分を変えるために何度も図書館まで足を運ぶ。

五月雨の中を傘を差さずに、文章力のなさを憂い泣きながらそぞろ歩く。

誰かが言っていた小説家の脳は足にあるかもしれないと思ったからだ。


「どうせ自分なんて」

「なにくそ、負けるもんか」

その繰り返し。

編集者さんや作品を読んでくれた人たちが、具体的な改善点を示してくれても

嫌なことから逃げることしかしてないから、書き出せない。

太宰は、酒と薬と女に逃げたのにどうして自分は……。

自分を裁き、めった刺しにしてしまう。

じっくり観察することも掘り下げることもしてないからつけが回ってきてる。

そもそも、人間が嫌いなんだから、目を背けて生きてきた。

そんな言い訳どうでもいいんだよ。

どうやったら、指摘されたことをかけるかじゃなくて

書けない自己正当化、理由づけ、言い訳ばかり探すんだ。

「なさけねーやつ」

「死亡フラグ建ててやるから、生あたたかく放置でもしてろ!!」

あああああああああああああああああああ

姿勢を正し、風呂に入り、禊として部屋の掃除をする。

丁寧に生活する。

まさに怠惰な自分との戦い。

心のおもてなしをするんだ。


「大丈夫、お前はやればできる子だ」

身罷った母さんの言葉が背中を推してくれた。

何度も対応してくださる編集者(竹内京子)さんにも感謝。

「ありがとうございます」

そして、数ヶ月後、林太郎のもとに出版社から連絡が入った。なんと、彼の小説が採用されたというのだ！

林太郎は、信じられずに何度も目をこすった。夢が叶うなんて、本当に信じられなかった。

第五章：新たな旅立ち

林太郎は、小説の出版記念パーティーに出席した。会場には、多くの著名人が集まっていた。

林太郎は、緊張しながらスピーチをした。そして、こう宣言した。

「これからも、夢に向かって走り続けます！」

林太郎は、9万円という借金を返済し、新しい生活を始めた。彼は、小説家として成功を収め、多くの人に愛される作品を生み出し続けた。

エピローグ

林太郎は、かつて絶望の淵に立たされたことを忘れない。しかし、彼は同時に、希望の大切さも知っていた。

どんな困難な状況でも、諦めなければ夢は叶う。林太郎は、そう信じていた。


林太郎は机に伏せたまま、息苦しいほどの絶望に包まれていた。請求書の数字が彼の目を刺し、心を苦しめる。無情な数字は彼の胸に重くのしかかり、深い深いため息をつく。目の前に広がる現実は、彼を窮地に追い込んでいた。

焦燥感と不安が彼の心を支配し、苦悩が身体を縛り付ける。林太郎は自分の力の無さを痛感し、それがますます彼を打ちひしがれさせた。彼の胸には、やり場のない怒りと悔しさが渦巻いていた。

しかし、その絶望の中にも、微かな希望の光が見え隠れしていた。それは彼の心を支える小さな火種であり、彼を立ち上がらせる原動力となった。彼の内に燃える情熱が、絶望の中に一筋の光明を差し込んでいたのだ。