お金がない

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
100 / 965

お金がない バラのコクテールが欲しい

しおりを挟む
お金がない バラのコクテールが欲しい

薄暗い路地裏のバー。古びたカウンターに腰掛ける青年、健太は、グラスに入った琥珀色の液体をじっと見つめていた。

「お金がない…」

健太は、ポケットの中を確かめる。しかし、そこには空っぽの財布しか残っていない。

今日は、大切な彼女、美咲の誕生日だ。美咲は、バラの花束とバラのコクテールが大好きだった。健太は、朝からアルバイトを掛け持ちして、なんとか花束を手に入れた。しかし、カクテルを作るお金は足りなかった。

「どうすればいいんだ…」

健太は、頭を抱えて悩んだ。美咲は、もうすぐバーに来るはずだ。何も用意できていないと、きっと怒ってしまうだろう。

健太は、バーテンダーに声をかけた。

「すみません。カクテルを作りたいんですけど、お金がありません…」

バーテンダーは、健太をじっと見つめた。そして、ゆっくりと口を開いた。

「君には、何か特別な才能はあるかい?」

健太は、首を振った。

「何もありません…」

バーテンダーは、ニヤリと笑った。

「じゃあ、歌ってみろよ。君の歌声で、カクテルの代金を払ってくれるかもしれない。」

健太は、戸惑った。自分は歌が苦手だった。しかし、美咲のために、勇気を振り絞って歌い始めた。

最初は、声が震えていた。しかし、次第に歌声に力が入ってきた。健太の思いが、歌声に込められている。

バーテンダーは、じっと健太の歌声に耳を傾けていた。そして、歌が終わると、グラスを取り出した。

「素晴らしい歌声だったよ。君のカクテル、用意しよう。」

健太は、信じられない気持ちでグラスを受け取った。

「ありがとうございます!」

健太は、カクテルを手に、バーを出た。そして、美咲の元へ向かった。

美咲は、花束を見て喜んだ。そして、カクテルを口にすると、目を輝かせた。

「なんて素敵なカクテルなの!ありがとう!」

健太は、照れながら笑った。

「お金がなくて、歌を歌って代用してもらったんだ。」

美咲は、健太の頭を撫でた。

「歌声も、花束も、とっても素敵だったよ。ありがとう。」

健太は、美咲の笑顔を見て、幸せな気持ちになった。お金はなくても、愛があれば、何でもできるということに気づいたのだ。

その夜、健太と美咲は、二人でバラのコクテールを飲みながら、夜空を見上げた。

二人は、これから先もずっと、お互いを大切にしながら、幸せに暮らしていくことを誓った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

ぽっちゃりOLが幼馴染みにマッサージと称してエロいことをされる話

よしゆき
恋愛
純粋にマッサージをしてくれていると思っているぽっちゃりOLが、下心しかない幼馴染みにマッサージをしてもらう話。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...