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春秋花壇

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凛然たる薔薇と偽りの騎士

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「凛然たる薔薇と偽りの騎士」

卒業パーティーのために、色とりどりのドレスで溢れる学園の大広間。その華やかな空間が、瞬間的に静止した。

流れる音楽も、人々の動きも止まり、すべての視線が一点に集まっていた。

その中心には、エカテリーナ・サリフォード公爵令嬢、第二王子コンラッド、そして彼の腕に手を添えるマーガレット・ナーム男爵令嬢の姿があった。

「エカテリーナ、婚約を…」

「ペイ…とうってお菓子をご存じかしら？」

エカテリーナがコンラッドの言葉を遮ると、場がざわめく。呆気に取られたコンラッドは、わずかに咳ばらいをして続けようとした。

「エカテリーナ、私は…」

「チューインキャンディーって、最近は新しい味がたくさん発見されているそうですわ。」

コンラッドはギリッと奥歯を噛みしめた。眉間に皺を寄せ、エカテリーナを睨みつける。

「エカテリーナ、君の態度には…」

「デンスミルクという魅惑の食べ物が、かの国にはあるそうですのよ。」

コンラッドは拳を握り締め、その声を震わせる。

「エカテリーナ、ふざけるのもいい加減にしろ！」

「ラッド殿下、どうかなさいましたの？」

その瞬間、コンラッドの拳が振り上げられた。周囲から悲鳴が漏れる。しかし、彼の腕は空を切った。背後からがっしりと捕まれていたのだ。

「この騒ぎは何だ？」

振り返ると、そこにはコンラッドの兄である王太子が立っていた。鋭い眼差しでコンラッドを睨みつけている。

「兄上！　私はエカテリーナとの婚約を破棄します！」

コンラッドの言葉が響くと、大広間が静まり返った。エカテリーナは一歩後ろに下がり、冷静な声で口を開いた。

「コンラッド殿下、婚約を破棄される理由を伺ってもよろしいかしら？」

「お前は冷酷で思いやりのない女だ！そして、マーガレットこそが私の真実の愛だ！」

エカテリーナは視線をマーガレットに向ける。その場の誰もが彼女に注目している中、マーガレットは顔を歪めた。

「嘘よ、嘘！エカテリーナは悪役令嬢よ！私がこの物語のヒロインなの！」

「ヒロイン？私たちは小説の登場人物ではございませんわ。」

エカテリーナは静かに微笑むと、王太子に向き直った。

「殿下、マーガレット様の言葉に真実性があるかどうか、今一度お確かめいただけますか？」

「もちろんだ。」

王太子は静かに頷くと、側近に指示を出した。すると、マーガレットの過去の行いに関する報告がすぐに持ち込まれた。

「マーガレット・ナーム男爵令嬢、貴女は何度も裏切り行為を働いていることが判明している。これ以上放置するわけにはいかない。」

マーガレットは青ざめ、必死に抗議したが、騎士たちが近づいて彼女に縄をかけた。

「コンラッド、お前もだ。父上に相談して、今後の処遇を決める。」

王太子の冷たい声に、コンラッドはその場に崩れ落ちた。

やがて、大広間の静けさが解かれる。王太子が手を叩くと、音楽が再び流れ始め、人々はほっと息をつきながら歓談を再開した。

王太子はエカテリーナのもとに歩み寄り、その手を取りながら優しく微笑んだ。

「お前の冷静さと美しさには、いつも驚かされるよ。」

「お褒めいただき光栄ですわ、殿下。」

エカテリーナの頬が赤らむ。彼女は王太子にそっと目を向けると、小さく笑みを浮かべた。

二人の姿は、誰の目にも完璧な一対として映っていた。

エカテリーナが悪役令嬢であろうと、彼女には確固たる絆と未来が約束されている。それが、この場での唯一揺るぎない真実だった。

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