「俺は小説家になる」と申しております

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
1,644 / 1,782

豆腐のなめこ汁にみかんの皮を添えて

しおりを挟む
豆腐のなめこ汁にみかんの皮を添えて

今日は久しぶりに、心からリラックスできる時間を自分のために作ろうと決めた。忙しい日常に流されて、自分の心や体を後回しにしていたことに気づいたからだ。そんな思いが胸に浮かんだとき、ふと台所に立つことを思いついた。

まずは、あたたかいものが食べたい。何も特別なことをする必要はない。ただ、心を込めて作れる、そして体に優しいもの。それが今の私には一番だと思った。

選んだのは、シンプルな豆腐となめこのお味噌汁だ。冷蔵庫に残っていた新鮮な豆腐、そして旬を迎えたなめこ。どちらも、私にとっては安定感のある味であり、心を落ち着かせてくれる食材だ。

味噌を溶かして、ひとさじひとさじと丁寧に溶かしながら、湯気が立ち上る。静かな時間が流れ、心地よい香りが台所に広がる。豆腐が柔らかく、なめこがツルリと滑るように食感が良く、体に染み入るようだ。

それでも何か物足りなさを感じていた私は、ふとみかんを思い出した。デザートに食べることが多いけれど、その皮にこそ深い効能があることを知っている。柑皮として乾燥させたみかんの皮は、古くから中国で漢方薬として使われてきた。

迷わずみかんの皮を取り、丁寧に洗った後、細かく切り分けてなめこ汁にひと振り。まるで小さな香りの魔法のように、皮が放つ香りが広がる。その香りは、心を穏やかにしてくれる。

みかんの皮に含まれる「陳皮」や「橘皮」の効能を思い浮かべながら、私はひと口、またひと口と味わう。胃腸を整え、冷えを改善し、そして、リラックス効果を感じながら、ゆっくりと体の中から温かさが広がるのを感じた。これが、私が求めていたものだと、深いところで気づく。

自然の恵みを、自分の手で調理し、心を込めて味わうこと。その瞬間、私は自分を慈しむことができているのだと思う。日々の忙しさや、未来の不安が押し寄せてくるけれど、このひとときの静かな幸せは、他の何にも代えがたい。

みかんの皮の甘い香りが、食卓の上で広がり、心が落ち着いていく。たった一杯のお味噌汁と少しの工夫で、私は自分を大切にすることができた。体の中から温まって、外の冷たい空気にも負けずに心が安定していくのを感じる。

食べ終わった後、私はしばらくその余韻に浸った。窓の外では、風が木々を揺らし、鳥たちがさえずる音が聞こえる。こんなふうに、何でもない日常に幸せが散りばめられていることに気づくとき、私は本当に幸せだと感じる。

心の中で、静かに「ありがとう」とつぶやいた。自分自身に、そして、この日常に。そして、これからも大切にしていきたい、あたたかいひとときを感じることを。

このひとときが、私の心を癒し、また明日から元気に歩んでいく力となるだろう。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

生きる

春秋花壇
現代文学
生きる

処理中です...