「俺は小説家になる」と申しております

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
1,610 / 1,782

しあわせの道

しおりを挟む
しあわせの道

1972年12月、連載漫画「しあわせ」は、志麻が新しい生活を始める希望に満ちた場面で完結した。その時、私自身もまた新しい人生を歩み始めようとしていた。漫画の連載を終えた後、私は1週間の間に自分の生き方を見つめ直し、ついに決断を下した。エホバへの献身の象徴としてバプテスマを受けることを決めたのだ。

その日、私は教会の水槽の中で、全てを委ねる気持ちでエホバの名前を呼び、その瞬間、自分の心の中で何かが変わったのを感じた。これが本当に新しい人生の始まりだと、心から実感した。私にとって、このバプテスマはただの儀式ではなく、深い意味を持つ決意の表れだった。

それから数ヶ月後、私は専属契約が切れるのを待って漫画家の仕事を辞め、1973年9月からはエホバの証人として全時間奉仕者になった。漫画の世界を離れるのは簡単な決断ではなかったが、私の心の中では、もっと大きな使命が待っていると感じていた。全時間奉仕者としての生活は、漫画家としての忙しい日々とはまるで違うものだったが、それでも心の中で満たされていく感覚があった。

その間、私は二人のアシスタントにエホバの教えを伝える機会を得た。彼女たちが真の幸せへの道を悟るのを手助けすることができたことは、私にとって大きな喜びだった。彼女たちがバプテスマを受け、新たな生活を始める瞬間を共に見届けた時、私は漫画家として達成感を感じたこと以上の充実感を味わった。それは、他の人々を本当の幸せに導くという、何物にも代えがたい経験だった。

1975年からは、私は毎月140時間以上をクリスチャンの宣教活動に費やしている。何気ない日常が、すべて神のための奉仕に変わった。宣教の活動をしているとき、私はいつも一つのことを思う。それは、今まで漫画家として多くの人々に影響を与えてきた自分が、今度は真実を広めるために影響を与えられる立場にいるということだ。私が描いた漫画が、どれほど多くの若者に不道徳な考えを植えつけてしまったかということを思い出すと、私は胸が痛む。しかし今、私はそれを取り戻すために、神の言葉を広める役目を果たしている。この仕事は、どんな漫画家としての成功にも勝るものだと、私は心から信じている。

私の人生は、以前のように高額な収入があるわけではない。漫画家としての人気も、今はもう過去のものとなった。しかし、今の私は、そんなことにこだわらない。それよりも、永遠に続く幸せの道を歩むために、他の人々を助けるという仕事があることに、深い満足感を感じている。この道がどんなに素晴らしいかを、私は毎日実感している。そして、私はただの漫画家ではなく、もっと創造的な仕事をしているのだと思う。私の新しい仕事は、人々の心に希望を与え、真実を広めることであり、それはどんな創作活動よりも価値があるものだ。

また、私は今、真の兄弟愛を示してくれる仲間たちに囲まれている。この共同体に身を置くことで、私は愛と信頼の絆を感じ、心から幸せを感じている。それは、かつての私が経験したことのない充実感だ。かつて、私は一人で自分の成功を追い求め、名声やお金に満足していたが、今はその全てが無意味に思える。そして、何よりも、私は宇宙の偉大な創造者である神を知り、その方に仕えるという素晴らしい特権を持っている。それこそが、私にとって最も大きな幸せであり、希望なのだ。

私の心の中で、漫画家としての栄光よりも、神の教えに従い、他の人々に幸せをもたらすことが最も重要な使命であることを知った時、私は完全に満たされていると感じた。地上の楽園で、神を永遠に賛美し、共に生きるという希望が、私の前に広がっている。この道を歩むことができて、本当に幸せだと、私は心から感じている。

藤井由美子の語った経験は、私の人生の転機であり、これからの人生を永遠に幸せなものへと導いてくれる道しるべとなった。







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

生きる

春秋花壇
現代文学
生きる

処理中です...