「俺は小説家になる」と申しております

春秋花壇

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どんな生活か

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どんな生活か

人気漫画家としての地位を確立すると、私の生活は一変した。上京してアパート暮らしを始めた頃から、その変化は急速に訪れた。朝起きると、まずは仕事に追われる日々が待っていたが、仕事を終えた後は、まるで売れっ子漫画家の定番のように、バーやクラブに繰り出しては、夜明けまで遊んでいた。昼間は寝ていることが多く、生活のリズムは完全に狂っていた。自分でも、これが「成功した漫画家の生活」だと、無理に納得していた。

人気を維持し、さらなる成功を収めるためには、より刺激的な作品を描かなければならない。それに加えて、仕事量も増え、より多くの作品をこなす必要があった。私は仕事が速いタイプではなく、納得がいくまで丁寧に仕上げたかったので、どうしても時間が足りなくなってしまった。気づけば、何日も入浴せず、部屋の掃除を1か月放置することが当たり前になっていた。締め切り前には、30時間や40時間ぶっ通しで作業を続けることもざらだった。

だが、それでも作品を完成させることこそが最優先だと思っていた。家族や友人との時間、身の回りのことすべてが後回しになり、生活が崩れていった。漫画家としての成功にすべてを捧げる覚悟をしていたものの、その代償は想像以上に大きかった。

その結果、物理的にはお金も時間も得ていたのに、心は空っぽになっていった。お金があることで、かえってそれを使う時間がないことに苛立ちを感じるようになった。そんな空虚感を埋めようとして、私は無駄遣いを始めた。毎月、着ることもない服を次々に買い、タクシーでの移動が当たり前になった。さらに、何万円もするレコードを一度に何枚も買ったりした。しかし、結局その物質的な贅沢は、心の空しさを強めるばかりだった。

人気が物を言うこの世界では、競争も熾烈で、成功すればするほど、ライバルとの意識が強まっていく。誰かが上がれば、必ず誰かが下がる。その現実を私も味わうことになった。トップに立つと、他の漫画家が自分をその座から引きずり降ろそうと目論むことは避けられなかった。そして、もし人気が落ちるようなことがあれば、今度はその反動で仕事が急激に減る。原稿料が高いままで人気が落ちれば、仕事の依頼が来なくなり、最終的には忘れ去られてしまう。

実際、私もその現実に直面したことがあった。最初は順風満帆だったものの、次第に読者の関心は他の新しい作家や作品に移り、私は少しずつ人気を失っていった。作品の質に対する期待は高いまま、私の名前が日増しに目に触れることが少なくなり、気づけば昔のようにファンからの熱い反響は無くなっていた。

当初感じた充足感や達成感は、素晴らしいものであった。しかし、華やかな漫画家の世界にいるうちに、私は徐々に空しさと焦燥感を感じるようになった。それはまるで、心の中を冷たい風が吹き抜けていくような感覚だった。自分でもその感情を認めたくないと思いながらも、その空虚感は消えることがなかった。自分の描く「しあわせ」が、実際にはどこか遠いもののように感じられ、手に入れられない幻のように思えてならなかった。

成功を追い求めるあまり、自分を見失っていた。名声やお金は得たけれど、それが本当に自分を幸せにしているのか、自分にとって何が本当のしあわせなのか、それを問うことはしなかった。だが、内心ではずっとその答えを求め続けていた。

人気を得ることが、必ずしも幸せにつながるわけではないことを痛感しながらも、私はまだそのことを他人に言う勇気を持てなかった。周囲の期待と自分の内なる不安の間で、私はずっと葛藤していた。






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