「俺は小説家になる」と申しております

翼くんのクラスメイトたちは、将来の夢についてどのように考えているのか

翼くんのクラスメイトたちは、将来の夢についてどのように考えているのか

翼はその日、学校の帰り道にふと、クラスメイトたちと将来の夢について話をしたことを思い出していた。朝のホームルームで、先生が「みんな、将来の夢を考えてみて」と言ったとき、クラスの中でさまざまな反応があった。その一方で、翼はその問いにすぐに答えられなかった自分がちょっと恥ずかしくもあり、少し焦りを感じたのだ。

学校が終わると、翼は親友の雄介と一緒に帰る途中、またその話をしていた。

「お前、将来の夢って決めたのか？」雄介が横を向いて聞いてきた。

「うーん、まだだな…」翼は少し悩んだ様子で答えた。「でも、いろいろ考えてみたんだけど、まだ決められないんだ。」

「そっか。俺はさ、早く決めたいと思ってるんだ。だって、何か目指さないと、毎日が無駄に感じるから。」雄介は前を見据えて、少し真剣な表情を浮かべた。

その言葉に翼は少し驚いた。雄介は、普段はそんなに真面目な話をしないタイプだったからだ。

「でも、そんなに急がなくてもいいんじゃないか？焦ると変なことを選んじゃいそうだし。」

「それもわかるけどさ、やっぱり早く決めておいたほうが、後々楽だと思うんだ。今、いろいろ試してみて、何か見つけられるかもしれないし。」雄介は言葉を続けた。「俺、将来はスポーツの仕事がしたいと思ってるんだ。もしかしたら、プロ選手になるかもしれないし、コーチとかトレーナーもいいなと思ってる。」

「すごいな…スポーツ選手か。」翼は少し感心した。「でも、プロってかなり難しくないか？」

「そうなんだけど、やるだけの価値はあると思うんだ。」雄介は少し顔を赤らめて言ったが、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。

その会話のあと、翼は他のクラスメイトたちについても考えてみた。クラスメイトの真琴は、いつも絵を描くのが得意で、最近は自分で漫画を描いていると言っていた。真琴は将来、漫画家になりたいと言っていたが、それが夢ではなく「目標だ」と言い切っていた。その目標に向かって、毎日練習を欠かさないのだという。

「漫画家かぁ…真琴ならなれそうだな。」翼は心の中でそう思った。

また、他のクラスメイトの加藤は、将来は医者になるんだと言っていた。加藤は成績が良く、理科や数学が得意だったから、彼の将来は誰もが予想していたことだった。翼は自分と加藤が全く違う世界に生きていることを感じ、少し不安になった。しかし、加藤は言った。

「医学部に行くのは大変だろうけど、自分の夢を叶えるためには努力するだけだよ。逆に、楽な道を選ぶほうが怖い。」加藤はニコリと笑って、まるで自分の未来が確信に満ちているかのように言った。

その言葉に、翼は少し圧倒された。自分には、何か明確な「夢」というものがまだ見つかっていないからだ。

放課後、翼は家に帰ると、リビングのテーブルで夕食の準備をしている母親に声をかけた。

「お母さん、みんなは将来のこと、どうやって決めてるんだろう…」

美佐子は鍋の中の具材をかき混ぜながら、「焦らなくていいよ、翼。あなたには、あなたのペースがあるから。」と優しく言った。

その言葉に、翼は少し安心した。焦ることはないんだという気持ちが、心に広がっていった。

一方で、クラスメイトたちの姿が浮かんでは消え、翼の頭の中ではさまざまな考えが巡った。雄介のようにスポーツ選手になりたい気持ちもあれば、真琴のように自分の得意なことを追求する道もある。加藤のように医者を目指すのも一つの選択肢だと思った。しかし、どれも自分にはしっくりこなかった。

その夜、翼は枕元に置いていたノートに、自分の気持ちを文字にしてみることにした。今はまだはっきりとした夢を描けなくても、ゆっくりと進んでいけばいいと感じるようになった。少しずつ、自分のペースで考えながら、道を探していけばいい。そうして書いた一文に、翼は安心感を覚えた。

「焦らず、ゆっくりと。自分の道はきっと見つかる。」

その日から、翼はクラスメイトたちの夢を応援しつつ、少しずつ自分の夢を見つけるために、日々の生活を大切にするようになった。誰かと比べることなく、自分だけの道を進んでいけばいいと、心の中で決めたのだった。