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春秋花壇

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ハッピー

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ハッピー

「幸せって何だろう?」

絵美は仕事帰りの電車で、ぼんやりと窓の外を眺めながら考えた。疲れた顔をガラスに映してみると、そこにいるのは目の下にクマができた自分。ここ数ヶ月、仕事が忙しく、残業が続き、プライベートの時間はほとんど取れなくなっていた。

「幸せかぁ……」彼女は心の中で呟く。子どもの頃は、ただ笑って友達と遊んでいるだけで幸せだった。でも大人になるにつれて、幸せを感じる瞬間は減ってしまったように感じる。

ある日、ふと思い立って、彼女は街中にある小さな花屋に寄ってみた。目を引いたのは、淡いピンクのガーベラ。小さな花束を自分のために買うなんてことは、今まで思いつきもしなかったが、その日だけは無性に欲しくなった。

「この花、ください」と店員に伝えると、店員はにっこり笑って言った。「自分へのプレゼントですか?いいですね、ちょっとした幸せが詰まってますよ」

絵美はその言葉に驚いた。そうか、幸せは大きな出来事ではなく、こうした小さな瞬間に詰まっているのかもしれない。電車の中で花を見つめていると、不思議と心が穏やかになっていくのを感じた。

その夜、絵美は久しぶりにゆっくりとお風呂に入り、好きな音楽をかけた。音楽のリズムに身を任せていると、胸の奥にある疲れや不安が少しずつ溶け出していくようだった。思わず笑みがこぼれる。何も特別なことはしていない。ただ、今日一日を丁寧に過ごしているだけだった。

「こんな日が、たまにはあってもいいよね」

翌朝、少し早く起きて散歩に出かけた。まだ誰もいない公園で、朝の空気を深呼吸する。新鮮な風が頬をなで、自然の香りが鼻をくすぐった。「幸せは、探すものじゃない。こうして今、この瞬間に気づくものなんだ」と彼女は思った。

それからというもの、絵美は忙しい毎日の中で、意識して小さな「ハッピー」を見つけることにした。好きなカフェでコーヒーを飲む時間、猫が膝に乗ってくる瞬間、友達と笑い合う時間——それらが少しずつ彼女の心に色を添えていった。

「幸せって、案外近くにあるものだな」

そう実感した時、絵美はやっと自分が「ハッピー」を感じられる日々を取り戻した気がした。









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