「俺は小説家になる」と申しております

春秋花壇

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想像の世界

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想像の世界

俺は小学校もろくに出てない。母子家庭で育った俺にとって、学業は贅沢な夢だった。父は俺が生まれる前にいなくなり、母はいつも忙しかった。小さいころ、俺は母が一生懸命働いている姿を見ていた。だからこそ、学校に行くことができない俺は、家庭の手伝いをするのが当たり前だった。

近所の公園で遊ぶ友達を見ていると、いつも心がざわついた。「俺も友達と遊びたい」と思うけど、母が帰ってくるまでには家を片付けないといけなかった。学校に行くことができず、友達と遊ぶこともままならない俺の世界は、狭くて孤独だった。

そんなある日、近所の子供たちが「高校に行く」「大学に行く」と話しているのを耳にした。俺はその言葉に耳を傾け、彼らの話す世界がどれだけ素晴らしいものなのかを知った。「大学に行けば、一流企業に就職できるんだ」と夢のような話だったが、俺には手の届かない話だった。

「何が一流企業だ。俺には無理だろうな」と心の中でつぶやいた。それでも、少しだけ憧れの気持ちが芽生えた。夢の世界を想像することは、俺にとって唯一の楽しみだった。

高校進学が近づく中で、俺は少しでも学ぶ機会を得たいと思った。独学で勉強を始め、図書館で本を借りるようになった。しかし、勉強を続けることは簡単ではなかった。時には母が働いている店に手伝いに行かなくてはならず、勉強の時間が削られた。それでも、夢の世界が少しでも見たくて、何とか続けていた。

そんなある日、近所にある小さな塾で「無料体験授業」を行うと知り、思い切って参加することにした。教室に入ると、周りは中学生ばかりで、俺は一人だけ浮いているように感じた。しかし、塾の先生は優しく、俺のような子でも受け入れてくれると言った。

「君がどんな環境に育ってきたかは関係ない。努力することが大切なんだよ」と先生は言ってくれた。その言葉に少しだけ勇気が湧いた。俺は塾に通い始め、勉強を続けた。だんだんと、少しずつだけど理解できるようになっていった。

ある日、塾で模擬試験があった。緊張しながら試験を受けると、自分がどれほど成長したのかを実感できた。自信を持てるようになり、少しずつ「俺も夢の世界に近づいているかもしれない」と思えるようになった。

しかし、家庭の事情は厳しかった。母が体調を崩し、働けなくなってしまった。俺は高校進学を諦めかけたが、先生の言葉が頭に残っていた。「努力することが大切なんだ」。だから、俺はあきらめずにアルバイトを始めた。母を支えるために、毎日学校の後に働いた。

何とか母が回復し、俺は高校に入学することができた。最初は不安だったが、友達ができるとともに、学校の楽しさを知ることができた。勉強も忙しいが、少しずつ夢の世界が現実に近づいているのを感じた。

高校3年生になった頃、就職活動が始まった。俺は「一流企業」に応募することを決意した。友達はみんな進学を選んでいたが、俺は「自分の力を試してみたい」と思った。企業の説明会に参加し、履歴書を送ったが、何度も不採用の通知が届いた。心が折れそうになりながらも、諦めなかった。

そして、ある日、ついに一つの企業から面接の連絡が来た。緊張と不安でいっぱいだったが、俺は自分を信じて面接に挑んだ。面接官に「なぜこの会社に入りたいのか」と聞かれたとき、素直に自分の気持ちを伝えた。「学歴がないけれど、努力してきた。この会社で成長したい」と言った。

その後、待ちに待った結果が届いた。合格通知が俺の手の中にあった。その瞬間、涙が溢れ出た。自分の努力が報われた瞬間だった。家に帰ると、母が待っていた。俺は合格を伝えると、母は泣きながら抱きしめてくれた。「頑張ったね、りょう。私たち、やっと夢が叶ったんだね。」

就職が決まり、俺は「一流企業」の社員として新しい生活が始まった。周りは学歴のある人ばかりだが、俺は自分の道を進むことにした。夢の世界は、努力することで少しずつ手の届くところにあることを知った。今、俺はこの世界で輝くことを目指している。






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