上 下
1,421 / 1,508

涙の川

しおりを挟む
涙の川

俺の名前はタクヤ。35歳、独身、フリーター。夢は小説家だけど、今のところはその夢を叶えられずにいる。毎日、日々の生活に追われて、パソコンの前に向かう時間もままならない。そんな俺が唯一楽しみにしているのは、アルファポリスでの投稿だった。しかし、ある日突然、光回線が止まってしまった。

「なんでこんな時に…」俺は頭を抱えた。光回線が止まったことで、パソコンが使えず、投稿ができない。しかも、投稿しないとインセンティブも得られない。結局、時間だけが過ぎていく。スマートフォンで代わりに投稿することもできるけど、画面が小さくて長文を書くのは苦痛だった。

「せっかくのチャンスが…」俺は深いため息をついた。そんな時、心の奥底に潜んでいた「どうせ無理だ」という声が頭をよぎる。俺の小説はいつも、他の作品に埋もれてしまう。いつも読まれないし、評価もつかない。それでも、夢を追うことをやめられずにいる。

その日、俺はやるせない気持ちで街を歩いた。普段は何気ない道も、今はまるで地獄のように感じた。店の明かりが煌々と輝いている中で、俺はまるで透明人間のように存在を消してしまいたかった。周囲の人々は楽しそうに笑っているのに、俺だけが孤独を感じていた。

「これからどうしよう…」そんなことを考えていたら、ふと目に入ったのが小さなカフェ。暖かい光が漏れ、外からも人々の笑い声が聞こえる。好奇心からそのカフェに入ることにした。

店内には、何人かの客がいた。穏やかな音楽が流れ、香ばしいコーヒーの香りが漂っている。俺は窓際の席に座り、メニューを眺めた。しかし、コーヒーの香りも、周囲の会話も、全てが俺の心に響かなかった。

「ああ、やっぱりダメだ…」俺は再びため息をついた。光回線が復活するまでの間に、何かを書こうとしたが、頭の中には何も浮かんでこない。焦燥感に駆られて、手元のスマートフォンを開いた。アルファポリスのサイトを眺めるも、結局は自分の作品を投稿することはできなかった。

そんな時、隣の席に座っていた女性の声が耳に入った。「最近、アルファポリスの投稿インセンティブがすごくいいって聞いた?今なら特に…」彼女は友人に話しかけていた。俺の心が少しだけ反応した。

「どうせ、俺には関係ない話だ…」そう思った瞬間、無性に腹立たしくなった。俺もそのインセンティブが欲しかった。しかし、今はパソコンが使えない。このまま自分の夢が叶うこともないのかもしれない。

思いが募り、胸が苦しくなった。「このまま永遠の眠りにつけたらいいのに…」何度も心の中で呟いた。涙が溢れ、気がつけばテーブルに頬を伏せていた。周囲の人々の笑い声は、俺にとっては遠くの音に聞こえる。

「なんで俺だけが…」その思いが胸の奥から押し寄せる。俺はいつもヘタレで、他の人に比べて何も成し遂げられない。ただ泣いているだけの自分が恥ずかしくなった。

「どうしよう、どうしよう…」思考が混乱し、涙の川が溢れ出た。誰も俺の存在に気づかない。無力感が押し寄せ、思わず声をあげて泣いた。

その時、隣の女性が驚いたように俺を見た。「大丈夫ですか?」彼女は心配そうに声をかけてくれた。その瞬間、涙が止まることはなかったが、少しだけ温かいものを感じた。

「俺は…ただ…小説家になりたくて…でも、うまくいかない…」口から言葉がこぼれた。自分の思いを吐き出すことで、少しだけ楽になった。

彼女は優しく微笑んで言った。「夢を持つことは素晴らしいことです。私も作家志望なんです。お互いに頑張りましょう。」

その言葉に、俺は心の底から温かさを感じた。もしかしたら、まだ諦める必要はないのかもしれない。光回線が復活しなくても、どんな形でも夢を追い続けることはできる。涙は止まらなかったが、少しだけ希望の光が見えたような気がした。

「ありがとう、頑張るよ。」俺は心の中で決意した。今までのように諦めない。少しずつ、前に進んでいこうと思う。夢に向かって、再び立ち上がるために。

そして、涙の川は少しずつ、希望の流れに変わっていく。明日はきっと、光回線が復活していることを願いながら。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

処理中です...