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春秋花壇

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Bling-Bang-Bang-Born。

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Bling-Bang-Bang-Born。

街の雑踏に紛れ、薄暗い路地裏で、異国の看板が怪しげに光っている。ネオンが瞬くその店には、「Bling-Bang-Bang-Born」という不思議な名が書かれていた。ドアにはベルがかかっていて、客が入るたびに甲高い音が響く。しかし、その音は街の喧騒にかき消され、誰にも聞こえないようだった。

リサはその看板を見上げ、しばし立ち止まった。彼女はこの店の噂を耳にしてからというもの、気になって仕方がなかった。ここに入ると、何か人生が大きく変わる「選択」を迫られるという。それがどんなものかは誰も語らなかったが、出てきた人々は皆、何かを失ったような、それでいて何かを得たような奇妙な表情を浮かべていたという。

「本当に大丈夫かな…」

リサは不安げに足元を見つめる。心の中には、踏み込むべきか、引き返すべきかの葛藤があった。彼女の人生は決して順調とは言えなかった。夢見ていたアーティストとしてのキャリアも思うようにはいかず、かといって普通の会社勤めも自分には合わなかった。ずっと何かを追いかけているような感覚だけがあり、けれどその「何か」は、手を伸ばしても掴めない霧のように彼女をすり抜けていく。

「もう、何かを変えなきゃ。」

リサは決心して、店のドアを押した。ベルが鳴り、暗がりから中へと足を踏み入れると、店内は予想外に広かった。古びた木の棚が並び、その上には様々な奇妙なアイテムが所狭しと置かれている。宝石のように輝く石や、古代の文字が刻まれた壺、見たこともない植物が生けられた瓶…。まるで異次元に迷い込んだかのような光景に、リサは思わず息を呑んだ。

「いらっしゃいませ。」

低く響く声に、リサははっと顔を上げた。カウンターの奥には、一人の老人が座っていた。深い皺の刻まれた顔に、眼光だけが鋭く光る。その目がリサを見つめている。

「お探しのものは？」

その言葉に、リサは一瞬返事に詰まった。自分が何を求めてここに来たのか、明確な答えがないまま足を踏み入れてしまったからだ。

「えっと…人生を、変えたいんです。」

老人は微笑んだ。その微笑みはどこか人を見透かすような、不可思議なものだった。

「それなら、こちらへ。」

彼はカウンターの奥から一冊の古びた本を取り出し、リサに差し出した。表紙には大きく「Bling-Bang-Bang-Born」と書かれている。

「この本に触れた瞬間、あなたの人生に大きな変化が訪れます。ただし、その変化が幸せかどうかは、あなた次第です。」

リサはためらった。何か得体の知れない力を感じる本だ。だが、彼女はもう後戻りできない気持ちで、本に手を伸ばした。

瞬間、目の前が真っ白になった。音も光もなくなり、彼女は無限の空間に投げ出されたようだった。そして次の瞬間、何かが頭の中で「Bang!」と爆発する音がした。まるで全身を電流が走ったような感覚に襲われ、彼女はその場に膝をついた。

「何…これ…？」

リサが目を開けると、目の前にはまったく違う世界が広がっていた。店の中ではなく、青空が広がる野原に立っている。風が吹き抜け、草がさわさわと音を立てる。遠くには小さな村が見えるが、ここがどこかはわからない。

「ここは…？」

リサは自分がどこにいるのか、何が起こったのか理解できずにいた。突然、背後から誰かの声が聞こえた。

「ようこそ、新しい人生へ。」

振り返ると、そこにはさっきの老人ではなく、若い男が立っていた。彼は微笑みながらリサに近づいてくる。

「あなたが選んだんですよ。この世界で、もう一度生まれ変わることを。」

「生まれ変わる…？」

リサは混乱したまま、男を見つめた。すると、男は頷いて続けた。

「そう。あなたは『Bling-Bang-Bang-Born』の選択をしたんです。今ここで、新しい人生を始めることができる。過去のしがらみも、失敗も、全てがリセットされるんです。」

リサは驚きとともに、少しずつ理解し始めた。あの本に触れた瞬間、彼女はまったく新しい世界に生まれ変わったのだ。ここでは何もかもが白紙。自分がどんな人生を選ぶかは、今から自分次第だった。

「でも…私は本当にこれを望んでいたの？」

不安が胸をよぎる。しかし、男は微笑みながら優しくリサに言った。

「答えはあなたの中にあります。ここで生きるか、元の世界に戻るか、選ぶのはあなた自身です。」

リサは立ち尽くし、しばらく考えた。何かを変えたかったのは確かだ。でも、この新しい世界で本当に幸せになれるのか、確信は持てなかった。

「もし元の世界に戻ったら、どうなるの？」

リサが尋ねると、男は少しだけ表情を曇らせて言った。

「戻ることもできます。ただし、そこでのあなたはもう変わってしまった。元の人生に戻れるわけではないんです。」

その言葉に、リサはふと気づいた。どちらにしても、もう完全に過去に戻ることはできないのだ。新しい選択をしなければならない。

リサは深く息を吸い込んで、ゆっくりと決断を下した。

「私は…ここで生きる。」

その言葉に、男は満足げに微笑んだ。

「Bling-Bang-Bang-Born。ようこそ、再び誕生したあなたへ。」

新しい世界でのリサの冒険が、今始まる。

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