「俺は小説家になる」と申しております

俺は小説家になる

俺は小説家になる

「ここに来るたびに思うんだ。なんでこんなに漫画本があるんだろうな」と、俺はネッカフェの一角で座りながらつぶやいた。目の前には数百冊もの漫画本が並び、ページをめくる音が静かな空間を満たしている。その中に埋もれている気持ちが、俺の心に火を灯した。

漫画の作者たちが、彼らの情熱を注ぎ込んだ作品の数々。キャラクターたちが生き生きと動き出し、ストーリーが展開される。そんな彼らの息吹が感じられる場所、ここは俺にとっての聖地だった。

「俺も小説家になる！」と、何度も自分に言い聞かせてきた。だが現実は厳しい。書き続けることはできるが、売れない小説家としての自分を受け入れなければならない。誰にも読まれない原稿を何度も修正し、心を削るように言葉を紡いでいる。

「お前、何をそんなに悩んでいるんだ？」と、隣に座る見知らぬ少年が声をかけてきた。彼は漫画を読みながら、楽しそうに笑っている。俺は少し驚いたが、彼の無邪気さに心がほぐれた。

「小説家になりたいんだけど、全然ダメでさ」と、俺は苦笑いを浮かべた。

「そんなことないよ！漫画だって、最初は誰も読まないんだ。努力して、続けることが大事なんじゃないかな」と、少年は真剣な目で言った。彼の言葉に励まされ、俺の心に少しずつ自信が戻ってきた。

「ありがとう、そうだよな。続けることが大事なんだ」と答えると、彼は嬉しそうに頷いた。俺は思った。彼の純粋な思いが、俺の心に響いたのだ。

次の瞬間、俺は自分のノートを取り出した。薄汚れたページには、ボールペンで書かれた未完成の物語がいくつも眠っている。何度も読み返しては、修正を加えているが、なかなか完成しない。そんな中でも、彼の言葉を思い出しながら、新たな気持ちで物語に向き合うことにした。

「俺は小説家になる！」と、改めて自分に誓った。自分の気持ちを素直に表現し、誰かの心に響く作品を創り出す。いつか、俺の物語が誰かの心に残ることを夢見て、再びペンを走らせた。

時間が経つにつれて、俺の物語は少しずつ形を成していった。ストーリーが進むにつれてキャラクターたちが鮮明になり、彼らの声が耳に響くようになっていく。ページをめくるごとに、俺は彼らと共に成長していくのを感じた。

周囲の雑音が消え、俺は物語の中に没頭していた。現実の厳しさを忘れ、創作の楽しさに包まれていた。少年の言葉が、俺の背中を押してくれたのだ。

「俺は小説家になる！」その気持ちが高まるにつれて、自分の作品に対する愛情が深まっていった。ネッカフェの空間が、俺の創作の場となり、心の奥底から湧き上がる情熱を表現する場所へと変わっていく。

最後に俺は、ノートを閉じて深呼吸した。自分の中に芽生えた希望が、確かに形を変えていた。小説家になる夢は、決して遠いものではないと信じることができた。これからも、俺は書き続ける。自分の物語を紡ぎ出すために、そしていつの日か、誰かに届けるために。

「ありがとう、少年。お前のおかげで、また一歩踏み出せたよ」と、心の中で呟いた。彼の姿はもう見えなかったが、その言葉は俺の胸にしっかりと刻まれていた。