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悪い仲間

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悪い仲間

夜の街は、ネオンがちらちらと光を放つ中で、静かに動いていた。繁華街の裏路地にある小さなバーの扉を、リュウジはそっと押し開ける。薄暗い照明の中、彼の目が慣れると、カウンターに座っている数人の客がぼんやりと見えた。そこにいたのは、彼の仲間――「悪い仲間」と呼ばれている連中だ。

「おう、リュウジ。遅かったな」

一番奥に座っていたタカシが、グラスを傾けながら声をかけた。彼の隣には、ユウキとカズヤが座っている。リュウジは苦笑いを浮かべながらカウンターの端に腰掛けた。いつものメンバー、いつもの場所、いつもの空気。だが、今夜は何かが違っていた。

「何かあったのか?」リュウジは、タカシの不機嫌そうな表情に気づき、尋ねた。

「今日さ、ヤバイ仕事が入ったんだよ」

タカシはグラスを置き、低い声でつぶやいた。周りの客たちは全く気に留めず、彼らの話に耳を傾ける者は誰もいない。リュウジは不安を覚えながらも、詳しく聞こうと身を乗り出した。

「ヤバイって、どれくらいヤバイんだ?」

タカシは肩をすくめ、冷ややかな笑みを浮かべた。「簡単な話さ。金が必要なんだ。オレたちは、手っ取り早く稼がなきゃならない。けど、今回はいつもみたいに小さな悪さじゃない」

その言葉にリュウジの胸が重くなる。これまで仲間たちと共に、些細な悪事には手を染めてきた。スリや万引き、軽い窃盗――誰にも気づかれない範囲で、ギリギリ法を犯してきた。しかし今回の「ヤバイ仕事」が意味するものが、これまでの範囲を超えていることは明らかだった。

「俺たち、どこまでやるつもりなんだ?」リュウジは、思わず口をついて出た。胸の中のモヤモヤが限界に達したのだ。

タカシはじっとリュウジを見つめた。その目には、いつもの軽薄さではなく、冷たい決意が宿っていた。

「やるしかないだろ。お前もわかってるだろ?オレたちがここまで来ちまったんだから、今さら後には引けない。もう他に選択肢なんてないんだよ」

ユウキとカズヤも黙ってうなずいていた。彼らも覚悟を決めているようだったが、リュウジだけはどうしてもその言葉に同意できなかった。

二つの道
リュウジはカウンターの上に置かれたタカシのスマホをちらりと見た。そこには仕事の詳細が書かれているようだったが、彼は知りたくなかった。これ以上、深く関わってはいけないと、心のどこかで警告が鳴り響いていた。

「俺は……今回の仕事には乗れない」リュウジは、強い決意を込めてそう言った。

その言葉に、タカシは鋭く目を細めた。しばらくの沈黙の後、彼は低く笑い始めた。

「ふざけるなよ、リュウジ。お前はオレたちの仲間だろ?今さら逃げるなんて許されると思ってんのか?」

ユウキとカズヤも同じように冷ややかな視線を送ってきた。リュウジは、自分がすでに深くはまりこんでいる現実を痛感した。しかし、それでも、ここで引き返さなければ自分はもっと取り返しのつかない場所に行ってしまうという恐怖があった。

「悪いが、俺はもうやれない。これ以上は無理だ」

彼は立ち上がり、バーテンダーに無言で会計を頼んだ。手持ちの小銭を出して支払いを済ませ、ゆっくりと扉に向かって歩き出す。その背中に、タカシの怒声が飛んだ。

「おい、リュウジ!逃げられると思うなよ!お前がこの世界に入った以上、簡単には抜けられないんだ!」

扉が閉まる直前、リュウジは一度だけ振り返った。そこには、自分と同じように選択肢を失い、深い闇に囚われた仲間たちがいた。彼らもかつては普通の人間だったはずだ。しかし、今では違う。金と欲望、そして恐怖に支配された存在になってしまった。

自分の道を選ぶ
冷たい夜風がリュウジの頬を打った。彼は深く息を吸い込み、頭をクリアにする。これまでの仲間との縁を切ることは、簡単ではない。タカシの言葉の裏にある脅威は現実だ。逃げ出そうとする者には容赦しないのが、この世界のルールだ。しかし、リュウジはもう迷っていなかった。

歩き続けるうちに、彼の胸に少しずつ勇気がわき上がってきた。このまま道を誤り続けるわけにはいかない。たとえ一人になったとしても、彼にはまだ別の道がある。

「俺は、自分の人生を生きるんだ」

そう心の中でつぶやき、リュウジは静かに闇の中を歩き出した。悪い仲間との縁を断ち切り、新たな未来を切り開くために。
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