「俺は小説家になる」と申しております

喪神の正体（続編）

喪神の正体（続編）

登場人物
佳奈：喪神との出会いを経て、過去の悲しみを受け入れ、前向きに生きる決意をした女性。
雅人：佳奈の幼馴染で、家族を事故で失い、喪神の存在に強く惹かれている。
美咲：町の図書館の司書で、心の傷を抱えながらも、佳奈を支えようとする優しい女性。
勇一：佳奈の父で、妻を亡くしてから心を閉ざしているが、娘の成長に気付いていく。
佳奈は神社の近くで、幼馴染の雅人と再会した。彼の表情には、どこか疲れた影があった。

「佳奈、元気そうだね。」雅人は言った。

「ありがとう、雅人こそ。最近どうしてるの？」佳奈は彼の顔を見つめた。

「実は、まだ家族のことを引きずっていて……喪神に会いたいと思っているんだ。」雅人の声には、悲しみが滲んでいた。

佳奈は彼の手を取った。「私も喪神と話をしたんだ。彼は私たちの心の中にいると言っていた。失ったものを思い出しながら、未来を見つめることが大切だよ。」

雅人は微かに頷いた。「でも、どうしても過去を手放せない自分がいる。」

その時、町の図書館で働く美咲が近づいてきた。「こんにちは、二人とも。何か話しているの？」

「雅人が、喪神に会いたいって。」佳奈が言った。

美咲の表情が柔らかくなる。「私も喪神のことを調べてみたいと思っているの。彼の存在が、どうして人々にこれほど影響を与えるのか。」

「美咲も？私たち、喪神のことを一緒に探ってみない？」佳奈が提案した。

「いいアイデアね！」美咲は目を輝かせた。「図書館にある資料を調べて、みんなで集まって話し合おう。」

一方、佳奈の父・勇一は、娘たちの話を遠くで耳にしていた。妻を亡くした後、心を閉ざしていたが、佳奈が少しずつ前に進む姿を見て、何かを感じ始めていた。

「喪神か……」勇一は呟いた。「あの神社に行ってみるか。」

数日後、勇一は神社を訪れた。静かな風が吹き抜け、木々の間から日差しが差し込む。彼は、その場に立ち尽くした。心の奥で何かがざわめき、失った妻の笑顔が思い出された。

その瞬間、勇一は涙を流した。「ごめん、君を忘れようとしていた。」

佳奈、美咲、雅人の三人は、図書館で集まって喪神についての資料を調べていた。美咲が見つけた古い書物には、喪神が人々の心の中で悲しみを癒す役割を果たしていると書かれていた。

「これを見ると、喪神がただの神話ではなく、私たちの心の一部として存在することがわかるね。」美咲が言った。

雅人は興奮した表情で続けた。「もしかしたら、私たちが彼を理解することで、過去の傷を癒すことができるかもしれない。」

佳奈も心を鼓舞された。「それなら、私たち自身が喪神の意味を見つけていく旅に出よう！」

数日後、佳奈は父の勇一に、彼女たちの探求について話した。勇一は、初めて笑顔を見せた。「お前がそう言うなら、私も一緒に行こう。」

神社での集まりの日、佳奈の父、雅人、美咲が集まり、それぞれの思いを共有した。雅人が自分の家族の悲しみを語り、勇一が妻を想う気持ちを打ち明け、美咲が自分の心の痛みを告白した。

その瞬間、喪神の存在がより身近に感じられた。彼らは共に手を取り合い、悲しみを抱えながらも前に進む決意を固めた。

「私たちの過去は消えないけれど、一緒にいることで少しずつ受け入れていける。」佳奈が微笑む。

「私たちの心の中には、喪神が生きている。だから、これからも大切にしていこう。」美咲が言った。

雅人も頷き、彼の表情には新たな希望が宿っていた。

そして、彼らはそれぞれの心の中に宿る喪神を抱きしめ、新しい未来へと向かう決意を新たにした。喪神の存在が、彼らの絆をより強く結びつけていくことを、誰もが感じていた。