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食べてしまいたいほどおいしそうな君の唇

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「食べてしまいたいほどおいしそうな君の唇」

夏の夕暮れ、街は鮮やかなオレンジ色に染まっていた。駅前の広場で、ユウは立ち止まり、目の前にいる彼女をじっと見つめた。彼女の名前はミサキ。出会ってから半年以上が経ったが、ユウはまだ彼女に気持ちを伝えることができていなかった。

「今日は一緒に夕飯食べに行かない?」ミサキがそう言って、微笑みを浮かべる。その笑顔が、ユウの胸をギュッと締め付ける。いつも通りの何気ない誘いのはずなのに、今日は特別に感じる。

「うん、行こうか」

ユウはなんとか言葉を絞り出した。ミサキの誘いを断る理由などなかったが、その日、彼はそれ以上のことを考えていた。今夜こそ、彼女に自分の想いを伝えようと決意していたのだ。

二人は駅から少し歩いたところにある小さなレストランに入った。店内は落ち着いた雰囲気で、カップルが多く訪れることで有名だった。窓際の席に座り、メニューを開くと、ミサキはふわりと笑って言った。

「ここ、雰囲気がいいよね。ユウ、こんな素敵な店知ってたんだ」

「うん、まあね。たまたま見つけただけだけどさ」

ユウは緊張を隠そうと軽く笑ったが、心の中では鼓動が早くなっていた。いつもなら楽しく過ごせる時間も、今日は特別な意味を持っていたからだ。彼の視線は、ミサキの唇に自然と向かっていた。

細く、柔らかそうな彼女の唇が動くたび、ユウはその魅力に引き込まれていった。言葉にはしないが、彼は何度もその唇を想像していた。それは甘く、優しく、触れた瞬間にすべてが溶けてしまいそうなほどだった。

「ユウ、どうしたの?」

ミサキの声で我に返る。彼女は心配そうにこちらを見つめていた。

「え、いや、なんでもないよ。ただ、ちょっと考えごとしてただけ」

「そっか。なんか元気ないから心配になっちゃった」

ミサキはそう言いながら、手を差し出してきた。その手はテーブルの上でユウの指先に軽く触れた。ユウは驚き、少し息を呑んだ。彼女の優しさが、さらに彼の決意を強めた。

「ミサキ、実は……」

ユウは思わず言葉を飲み込みそうになったが、ここで引くわけにはいかなかった。彼女が優しく見つめる瞳が、ユウを後押しするようだった。

「何?」

ミサキの顔がほんの少し近づいてくる。ユウはその唇に目を奪われながら、意を決して言葉を続けた。

「俺、ずっと君のことが好きだったんだ」

その言葉が口から出た瞬間、時間が止まったかのように感じた。店内のざわめきが遠くに消え、二人だけの世界が広がっていた。ミサキは一瞬驚いた表情を浮かべたが、次の瞬間には笑顔に戻っていた。

「……ユウ、本当に?」

彼女の声は驚きと喜びが混ざり合ったようだった。ユウは頷き、続けた。

「君と一緒にいると、いつも楽しくて、それに……その、君の唇がすごく魅力的で……食べてしまいたいくらいに思ってた」

言葉が出た瞬間、ユウは自分が何を言ってしまったのかに気づいて顔が赤くなった。そんなことを言うつもりはなかったが、心の中に隠していた本音が不意に飛び出してしまったのだ。

ミサキは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに笑い出した。その笑い声は軽やかで、ユウの緊張を解いてくれるようだった。

「食べちゃいたいって……そんな風に思ってたの?」

ユウは恥ずかしさに顔を隠しそうになりながらも、なんとか頷いた。

「いや、その、冗談とかじゃなくて……本当に、そう思ってたんだ」

「ふふっ、ユウってほんとに素直でかわいいね」

ミサキは笑いながら、ユウの手をしっかりと握り返してきた。その手の温かさが、彼の心に安心感を与えてくれた。

「ありがとう、ユウ。私も、ユウのこと好きだったよ。でも、こんなに素直に言われるとは思ってなかった」

彼女の言葉に、ユウの胸が温かくなった。自分の想いが通じたことが、何よりも嬉しかった。

「ミサキ……」

ユウは彼女の名前を口にし、再びその唇を見つめた。彼女も同じようにユウを見つめ、少しずつ距離が縮まっていく。唇と唇が触れる瞬間、ユウの心臓は今にも破裂しそうだった。

二人の唇が軽く触れ合い、ほんの一瞬、世界が甘くとろけた。その瞬間、ユウは確信した。彼女の唇は、本当に食べてしまいたくなるほど美味しそうで、そして愛おしかった。

夕焼けが二人の姿を静かに包み込む中、ユウは心から幸せを感じていた。これから始まる二人の未来が、どんなに素晴らしいものになるかを信じて疑わなかった。









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