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危険なカクテル
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危険なカクテル
バーへと案内した。赤い看板が光る、薄暗い店内。少し狭いが、音楽が心地よく響く。初めて足を踏み入れるバーの空気に、里奈の胸は高鳴った。男が「これ、うまいよ」と勧めたカクテルは、グラスの中で美しい色をしていた。アルコールの強さは感じず、甘さとフルーツの風味が口の中に広がる。
「おいしいね!」
里奈は無邪気に笑った。その笑顔に男も微笑み返す。話は途切れ途切れだったが、里奈にはその空間が新鮮で楽しかった。たった一杯だけのつもりだった。だが、里奈はそれ以上飲むことをためらった。初めてのアルコールだったからだ。しかし、次第に体がふわりと軽くなり、頭がぼんやりしてきた。
「もう帰ろうかな…」
里奈はゆっくりと席を立った。男は何も言わず、ただ見送るように目を細めていた。足元がおぼつかないが、どうにか店の外へ出る。歌舞伎町の明るいネオンが、ぼやけた視界にチカチカと映る。酔いが回ったのだろう。いつの間にかフラフラと歩きながら、里奈は職安通りへ向かっていた。
「こんなに酔っ払うなんて…」
里奈は心の中で自分に言い聞かせた。たった一杯だけなのに、どうしてこんなに酔ってしまったのだろう。初めてのアルコールがこんなにも体に影響するとは思わなかった。誰かとすれ違った気がするが、顔も覚えていない。ふと気づけば、目の前の景色がゆっくりと暗くなり、記憶はそこから途切れてしまった。
気がつくと、里奈は西武新宿駅のホームにいた。冷たいベンチに横たわり、目を開けると周囲はまだ夜のままだ。時計を見ると、午前3時。どうやってここまで来たのか、全く覚えていない。カバンの中身はそのままだったが、気味悪さが体を包んでいた。目の前には眠っているサラリーマン、駅のアナウンスが遠くで響く。
「帰らなきゃ…」
里奈は起き上がり、ふらつきながら改札口へ向かった。酔いは覚めたようだったが、頭の奥に残る鈍い痛みと恐怖が、彼女の心に刻まれていた。一杯のカクテルがもたらした初めての夜。里奈は、自分が今まで知らなかった危険な世界に触れてしまったことを、静かに反省しながら帰路についた。
初めてのアルコールが、初めての夜が、里奈に教えたのは単なる楽しさではなかった。そこには、見えない危険と、計り知れないリスクが潜んでいる。未成年の無防備な好奇心が、どれほどの危険を招くのかを、彼女はこの夜で痛感することになったのだ。あのバーで出会った男は誰だったのか、本当に一杯しか飲んでいなかったのか、そしてどうやって駅まで来たのか。答えのない問いが頭の中で渦巻く。
家に帰り、冷たいシャワーを浴びた里奈は、二度と同じ過ちを繰り返さないことを心に誓った。今夜の経験が彼女の人生の中で、何よりも苦く、そして忘れられない初めての一歩となったのだ。
バーへと案内した。赤い看板が光る、薄暗い店内。少し狭いが、音楽が心地よく響く。初めて足を踏み入れるバーの空気に、里奈の胸は高鳴った。男が「これ、うまいよ」と勧めたカクテルは、グラスの中で美しい色をしていた。アルコールの強さは感じず、甘さとフルーツの風味が口の中に広がる。
「おいしいね!」
里奈は無邪気に笑った。その笑顔に男も微笑み返す。話は途切れ途切れだったが、里奈にはその空間が新鮮で楽しかった。たった一杯だけのつもりだった。だが、里奈はそれ以上飲むことをためらった。初めてのアルコールだったからだ。しかし、次第に体がふわりと軽くなり、頭がぼんやりしてきた。
「もう帰ろうかな…」
里奈はゆっくりと席を立った。男は何も言わず、ただ見送るように目を細めていた。足元がおぼつかないが、どうにか店の外へ出る。歌舞伎町の明るいネオンが、ぼやけた視界にチカチカと映る。酔いが回ったのだろう。いつの間にかフラフラと歩きながら、里奈は職安通りへ向かっていた。
「こんなに酔っ払うなんて…」
里奈は心の中で自分に言い聞かせた。たった一杯だけなのに、どうしてこんなに酔ってしまったのだろう。初めてのアルコールがこんなにも体に影響するとは思わなかった。誰かとすれ違った気がするが、顔も覚えていない。ふと気づけば、目の前の景色がゆっくりと暗くなり、記憶はそこから途切れてしまった。
気がつくと、里奈は西武新宿駅のホームにいた。冷たいベンチに横たわり、目を開けると周囲はまだ夜のままだ。時計を見ると、午前3時。どうやってここまで来たのか、全く覚えていない。カバンの中身はそのままだったが、気味悪さが体を包んでいた。目の前には眠っているサラリーマン、駅のアナウンスが遠くで響く。
「帰らなきゃ…」
里奈は起き上がり、ふらつきながら改札口へ向かった。酔いは覚めたようだったが、頭の奥に残る鈍い痛みと恐怖が、彼女の心に刻まれていた。一杯のカクテルがもたらした初めての夜。里奈は、自分が今まで知らなかった危険な世界に触れてしまったことを、静かに反省しながら帰路についた。
初めてのアルコールが、初めての夜が、里奈に教えたのは単なる楽しさではなかった。そこには、見えない危険と、計り知れないリスクが潜んでいる。未成年の無防備な好奇心が、どれほどの危険を招くのかを、彼女はこの夜で痛感することになったのだ。あのバーで出会った男は誰だったのか、本当に一杯しか飲んでいなかったのか、そしてどうやって駅まで来たのか。答えのない問いが頭の中で渦巻く。
家に帰り、冷たいシャワーを浴びた里奈は、二度と同じ過ちを繰り返さないことを心に誓った。今夜の経験が彼女の人生の中で、何よりも苦く、そして忘れられない初めての一歩となったのだ。
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