「俺は小説家になる」と申しております

セニョリータの誘惑

"セニョリータの誘惑"

夜の帳が下り、街のネオンが煌めき始める。カフェの奥まったテーブルに座り、ユウタは一人でカプチーノをすすっていた。スマートフォンの画面には、さっきから既読がつかないメッセージの画面が開かれている。

「ねぇ、ベイビー、もう家にいる？」

一時間以上前に送ったそのメッセージは、まだ未読のまま。彼女、アリサはいつも気まぐれだ。連絡が取れないことなんて日常茶飯事だし、それでも彼女を待ち続けるのが彼のルーチンだった。

「また君のことばかり考えてる…」

ユウタはため息をつきながら、カフェの外に目を向ける。街の喧騒に溶け込むようにして、何組ものカップルが楽しそうに笑い合いながら通り過ぎていく。彼の心の中では、彼女の姿だけが鮮明に映し出されていた。

"愛してる？"

そう言っていたのは、ほんの昨日のことだった。アリサは、彼にとって特別な存在だった。彼女の唇、瞳、笑顔、そして肌の温もり…すべてが彼を虜にし、逃れられない。彼女の一挙一動が、彼の心を狂わせるのだ。

「僕もまた、君の虜になっている…」

その時、ドアのベルが鳴り、カフェに一人の女性が入ってきた。アリサだ。彼女は黒いドレスをまとい、長い黒髪を揺らしながらユウタの元へ歩いてくる。その姿は、まるで幻想の中の女神のようだった。

「待たせちゃった？」彼女が微笑んで尋ねる。

「いや、大丈夫だよ。」ユウタはぎこちなく答える。アリサが近づくたびに、彼の胸は高鳴り、喉が渇いたような感覚に襲われる。彼女の香りが鼻をくすぐり、彼の理性は次第に薄れていった。

アリサは彼の隣に腰掛け、軽く唇を舐める。その瞬間、ユウタの心は乱れた。彼女の唇が何を求めているのか、彼はもうわかっていた。

「ねぇ、今夜はどこかに行きたい？」彼女が囁くように言った。

「君が行きたいところなら、どこでもいいよ。」彼は答える。アリサの瞳が彼を捉えて放さない。彼女の目は暗闇の中の光のように輝いているが、同時に底知れぬ深さを持っている。その瞳に吸い込まれそうな気がして、彼はふと視線を逸らした。

アリサは彼の手を取ると、カフェの外へと導いた。二人は街の灯りを背にして、夜の闇へと消えていく。ユウタは彼女の温もりを感じながら、心の中で自分に問いかけていた。

"これが間違いだとしても、このままでいたい。"

彼の心には、アリサへの情熱が渦巻いていた。彼女の魅力はあまりにも強く、理性を打ち破る力を持っていたのだ。

二人はクラブの前に到着した。音楽が響き渡り、扉が開くたびに中の熱気と歓声が漏れ聞こえる。アリサはユウタの手を引いて中に入ると、そのままダンスフロアへと進んだ。

「踊ろう、ユウタ。」

彼女の声が耳元でささやかれた瞬間、彼は抵抗することをやめた。アリサのリズムに合わせて体を動かし、彼女の全てを感じ取ろうとする。彼女の唇、瞳、笑顔、そして肌のすべてが彼を魅了する。彼女に触れるたびに、彼は酔いしれていくような気がした。

"君は僕を夢中にさせる。"

彼は心の中でそう呟いた。彼女の瞳が彼を見つめ、その視線の中には明確な意図が感じられた。

「どうして私のことをそんなに好きなの？」アリサが微笑んで尋ねる。

「君が特別だからさ。」ユウタは素直に答える。彼の声には、嘘偽りのない真実が込められていた。

アリサはその答えに満足そうに微笑み、再び彼の耳元で囁いた。「じゃあ、今夜は私のすべてを感じてみて。」

その言葉に、ユウタは全身の血が沸騰するような感覚を覚えた。彼女の言葉は甘美な誘惑であり、同時に深い罠でもあった。だが、彼はその罠に落ちることを恐れていなかった。むしろ、彼は自らその罠に飛び込んでいくように感じていた。

"この幻想が続く限り、現実なんてどうでもいい。"

そう思いながら、彼は彼女と共に夜の果てまで踊り続けた。彼の中の理性はすでに消え去り、残されたのはただ、彼女への熱い想いだけだった。