「俺は小説家になる」と申しております

春秋花壇

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てれってれのTシャツ

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てれってれのTシャツ

真夏の午後、陽炎が揺れる中、彼女は一人で部屋の中に座っていた。古びたTシャツが身体にまとわりついていて、首元はすっかり伸び切り、何度も洗濯されたせいで生地は薄く、色もあせてしまっていた。てれってれに伸びたそのTシャツは、彼女が大学生の頃からずっと愛用しているものだった。思い出が詰まっているが、さすがに新しいTシャツが欲しいと感じることもあった。

「これ、もう10年くらい着てるのかな?」と、彼女は独りごちた。

鏡の前に立ち、Tシャツを見つめる。新しいものが欲しいと思いつつも、買い換える余裕はなかった。仕事も不安定で、収入も少ない。ちょっとした贅沢をする余裕など、今の彼女にはなかった。

彼女はため息をつき、机に向かった。ノートパソコンを開き、画面を見つめる。彼女の夢は、いつか自分の書いた小説が売れて、生活を豊かにすることだった。だが、現実は厳しく、これまで投稿した小説はいくつかの評価をもらえただけで、大きな成功にはほど遠かった。

「このTシャツを新しいのに変えるくらいの稼ぎがあればいいのにな……」と彼女は思いながら、キーボードに手を置いた。

その日、彼女は決心した。「今度こそ、いい作品を書いて、少しでもお金を稼いでみせる」と。

彼女はパソコンに向かって熱心に書き始めた。今回の物語は、自分自身の経験を少しだけ取り入れた、切なくも温かいストーリーだった。彼女がこの10年間で感じてきたさまざまな思い出や感情を織り交ぜながら、彼女は文章を紡いでいった。

ストーリーは、小さな町に住む一人の若い女性が主人公だった。彼女は、10年間も同じ古いTシャツを着続けている。Tシャツには彼女の青春の思い出が詰まっているが、今はその古びたTシャツが彼女の貧しさを象徴しているかのように思えてしまう。新しい服を買うお金もなく、彼女は日々の生活に追われていた。

そんなある日、彼女は一冊の古びたノートを見つける。そのノートには、彼女が昔から書きためていた物語がたくさん詰まっていた。ふとしたきっかけで、その物語を再び書き始めると、彼女は次第にその世界に没頭していく。書くことの楽しさを再発見し、彼女は自分の夢を再び追いかける決心をする。

彼女は夜な夜なパソコンに向かい、物語を書き続けた。現実の辛さを忘れるように、彼女は創作に没頭した。その努力が実を結び、ついに彼女の書いた物語が一部の読者に注目されるようになった。小さな成功ではあったが、彼女にとっては大きな一歩だった。

物語のクライマックスでは、主人公がついに自分の書いた物語で少しばかりの収入を得る場面が描かれる。そのお金で、彼女は新しいTシャツを買いに行く。店先で、彼女は迷いに迷った末に、明るい色の新しいTシャツを選ぶ。それを手にしたとき、彼女は新しい一歩を踏み出した気持ちになる。これから先も、自分の夢を追い続けると決意した瞬間だった。

現実の彼女も、物語を完成させ、ついに投稿する日がやってきた。投稿後、少しの時間が経ったが、反応は少しずつ集まり始めた。評価は上々で、読者からのコメントには、「この作品には心が温まる要素がたくさん詰まっていて、素晴らしかった」といった言葉が並んでいた。

数日後、彼女の物語は思いのほか人気を集め、電子書籍としての販売も決定した。小さな収入ではあったが、彼女はそのお金で新しいTシャツを買うことができた。

そのTシャツを手にしたとき、彼女は心から満足感を覚えた。これまでの努力が報われた瞬間だった。そして、新しいTシャツを身にまとい、彼女は次の物語に向けて新たな一歩を踏み出した。

終わり。








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