「俺は小説家になる」と申しております

春秋花壇

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「根源回帰」

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「根源回帰」

カビの生えた風呂を掃除しながら、湯船にお湯を張る。風呂場の冷たさと湿気に、久しぶりの掃除がいかに億劫なものだったかを思い知る。しかし、風呂場を使える状態にすることで、日常の一部を取り戻すことができると信じている。

「根がしっかりしていれば」――これは身罷った親がよく言っていた言葉だ。どんなに大変な状況にあっても、基本的な生活態度を維持し、堅実に生きることが大切だという意味だろう。これからはその教えを実践していかなければならない。僕の新しい生活の礎となるべき基本を取り戻すために。

風呂の掃除をしながら、細かい部分まできちんと手を入れていく。カビの跡を落とし、タイルを磨き、湯船を丁寧に洗う。心の中では親の言葉が繰り返され、掃除を進めることで心が少しずつ整っていくのを感じる。

湯船にお湯を張ると、ほんのり温かさが広がり、冷たい水道の水とは違って心が安らぐ。お湯の中に疲れた体を浸し、心の中に溜まったストレスや疲れも少しずつ流れていくように思えた。湯船に身を沈めると、これからの生活に対する期待感と少しの不安が入り混じりながらも、自分を取り戻すための第一歩を踏み出した実感があった。

「ゆっくりでいい。少しずつでもいい」と心に言い聞かせる。変わりたい、もっとよくなりたいと思いながらも、一度にすべてを変えることはできない。だからこそ、一つ一つ、着実に進んでいくことが重要だと理解している。これからは焦らず、根気強く、自分のペースで生活を整えていくつもりだ。

風呂から上がり、掃除を終えた後の達成感は何とも言えなかった。少しずつ変わり始めた自分の生活が、これからの未来を築いていく礎となる。親が残してくれた教えを胸に、これからも一歩一歩前進していこう。自分の力で、少しずつでも良い方向へと変わっていくことを目指して。








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