「俺は小説家になる」と申しております

過疎の村

過疎の村

静かな山奥、世間から隔絶された小さな村があった。人口はわずか8人、男4人、女4人。食べ物や飲み物は豊富で、森や農地には収穫に尽きないほどの恵みがあった。彼らは自給自足の生活を続け、誰もが家を建て、村の暮らしを営んでいた。

最初の20年は穏やかに過ぎた。村人たちは互いに協力し、家族を持ち、子供たちが生まれた。村の中では、男女が結ばれ、家族が形成されるのは自然な流れだった。仕事は分担され、皆が役割を持って生活していた。

しかし、人口が少ないことから、世代を重ねるごとに村人たちの関係はますます複雑になっていった。8人から始まった村は、20年後にはその子供たちと合わせて30人ほどに増えていたが、血縁関係が濃くなり、選択肢が限られていった。結婚相手の選択は難しくなり、近親婚が避けられない状況が生まれた。

最初は誰もがその事実を認めたくなかったが、やがて村の存続には避けられない問題だと悟るようになった。遺伝的な問題が出始めたのは50年後のことだった。病気や奇形、発達の遅れが次第に増えていった。村人たちは外部から新しい血を入れることを考えたが、外界と接触する手段を持たない彼らにはそれが叶わなかった。

村はゆっくりと衰退の道を歩み始めた。子供の数は減り、村全体が静寂に包まれることが増えた。大人たちは、日々の暮らしを続けながらも、未来への不安を抱えていた。彼らは自分たちの運命を受け入れるしかなかった。

100年後、村にはわずかに数人の年老いた村人が残っていた。彼らはもはや子供を持つことができず、未来を築くこともできなかった。村はそのまま歴史の中に消え去ろうとしていた。

食べ物や飲み物がいくら豊富でも、森や農地がどれだけ広がっていても、村を繁栄させるにはそれだけでは不十分だった。人々のつながり、外部との交流、新しい血の導入がなければ、村は次第に衰退し、終焉を迎える運命にあった。

その静かな村の跡には、かつてそこに人々が暮らしていた証拠となる家の残骸が散らばっていた。風が吹き抜け、木々がまたその土地を支配するようになっていった。村人たちが夢見た理想郷は、結局は彼ら自身の手で消えていったのだ。

そして、自然は再びその場所を包み込み、かつての村の存在を記憶の中に埋めていった。時間が経つにつれて、誰もその村のことを知る者はいなくなり、ただ自然が静かに息づいていた。村人たちの物語もまた、森の中でひっそりと終焉を迎えたのであった。