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春秋花壇

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勇気を出して

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「勇気を出して」

今日もまた、同じ道を歩いている。学校からの帰り道、夕方の薄暗さが街を包み込んでいた。夏の終わりを告げる風が頬を撫で、木々の葉がかすかに揺れる音が聞こえる。だが、心の中には重い雲が立ち込め、まるで空気が少しずつ濃くなっていくようだった。

歩く先には、あの狭い路地が待っている。そこを通らなければ家に帰るのに時間がかかるが、どうしても避けたくなる。昨日もその前の日も、そしてずっと以前から、その道を通るたびに恐怖が胸を締め付けた。

路地の入口が見えてきた。足が自然と遅くなる。暗く狭い路地の向こうには、数人の同級生がたむろしているのが見えた。彼らの笑い声が遠くからでも聞こえる。身体が固まるのを感じた。

「あいつらにまた何か言われるのかもしれない…」心の中で不安が渦巻く。毎回、同じようなことを言われ、バカにされる。何もできずに立ち尽くして、ただやり過ごすだけの自分が情けなかった。

「なんで僕は何も言えないんだろう…」弱い自分に対する怒りと、自分を守れない無力感が胸を締め付けた。だが、ただ避けて通るわけにもいかない。家に帰らなければならないし、回り道をする勇気すら出ない自分が悔しかった。

路地の入口で立ち止まり、深呼吸をした。心の中で決意を固める。「今日は勇気を出そう。少しでもいい、何かを変えなければならない。」

彼らの姿が近づいてくる。心臓が早鐘を打つ。手のひらに冷や汗が滲むのを感じた。だが、足は前へ進んでいく。彼らの前に立つ瞬間が迫っていた。

「あ、来たぞ。今日も弱虫が通るぜ。」一人が声を上げ、他の子たちも笑い出した。

彼の顔に熱が走るのを感じた。心の中で何度もシミュレーションした返事が、頭の中でぐるぐると回り、言葉が喉の奥で詰まった。しかし、今までとは違うものが胸の奥から湧き上がってきた。それは、小さな勇気の火種だった。

「やめろよ。」ついに言葉が口を突いて出た。自分でも驚くほどの小さな声だったが、それでも確かに言えた。

彼らは一瞬、驚いたようにこちらを見た。その視線にまた恐怖が襲ってきたが、逃げるわけにはいかなかった。「もう、やめてくれよ。」彼はもう一度、今度は少し強い声で言った。

彼らは顔を見合わせて、しばらく黙っていた。どこか戸惑ったような表情を浮かべた一人が、ふっと笑った。「なんだよ、それで終わりか?」しかし、その笑いには以前ほどの力がなかった。

「そうだ。終わりだ。」彼は自分の中で、再び勇気を奮い起こした。胸の中の鼓動が少し落ち着きを取り戻し、肩の力が抜けていくのを感じた。

「行こうぜ、時間の無駄だ。」リーダー格の一人が言い、彼らは肩をすくめながら去っていった。

彼はその場に立ち尽くしていた。心臓がまだドキドキしていたが、もう恐怖は薄れ、代わりに少しの安堵感が広がっていくのを感じた。自分が少しだけ、でも確かに強くなった気がした。

再び歩き出すと、空が少しずつ暗くなり、星が見え始めた。彼はふっと微笑みを浮かべ、家へと向かって歩き続けた。

「勇気を出して良かった。」そう呟きながら、彼は一歩ずつ前へ進んでいく。彼にとって、それは小さな一歩だったかもしれないが、その一歩が確かに彼を変えたのだ。

終わり

この物語は、いじめに立ち向かうために勇気を出す少年の物語です。小さな勇気が自分の内なる力を引き出し、困難に立ち向かうきっかけとなる様子を描いています。








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