「俺は小説家になる」と申しております

白昼夢の終焉

白昼夢の終焉

イオリア侯爵家のメイド、エリザベッタは、日々の任務に誇りを持っていた。彼女の仕事は、三姉妹の行動を監視し、遠く離れた異国の地に単身赴任している旦那様に報告書を送ることだった。旦那様は、長女マリアベルを特に信頼しており、彼女の成長を心待ちにしている様子だった。

ある日、エリザベッタはいつものように報告書をまとめ始めた。イオリア家の長女、マリアベルに関する報告書だ。マリアベルは、常に完璧であろうと努力し、妹たちの模範となるように振る舞っていた。しかし、エリザベッタはその裏に隠された一面を知っていた。マリアベルは表向きは優雅で献身的だが、実際には冷酷で計算高い一面を持っていた。

エリザベッタは、正直な報告を旦那様に届けるべく、細心の注意を払って報告書を作成した。ところが、その報告書が完成した翌日、エリザベッタは不審なことに気付いた。自分が書いた覚えのない文が報告書に書き加えられていたのだ。メイド部屋の鍵は彼女しか持っていないはずだったが、誰かが巧妙に侵入し、報告書を改竄したのだろう。

それは、マリアベル以外には考えられなかった。彼女は報告書の内容を操作し、父親からの評価をさらに高めようとしたのだ。

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【報告書】

イオリア家の長女であるマリアベル様はいつも
ダンスの稽古と礼儀作法の勉強をしています。一方、他の姉妹たちは
遊んでばかりいて時間を無駄にしています。マリアベル様は
自ら進んで妹たちに勉強を教えています。彼女の手伝いがなければ
落第してしまうでしょう。またマリアベル様は
休暇を返上してまで勉強に打ち込んでいますが、他の姉妹は
自堕落にサボります。マリアベル様は向上心というものが
豊富であるにもかかわらず、慢心することは
まったくありません。彼女がこの家にいなければ
イオリア家は立ちゆかないでしょう。そこで彼女のお小遣いを値上げすれば
よい影響が出るでしょう。結論としましてはマリアベル様へ
褒め称える手紙を送ってください。最大限の愛情をもって
しかるべき処置をしてください

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エリザベッタはすぐに気づき、次の報告書で旦那様に訂正を送った。「旦那様、申し訳ありません。どうやらマリアベル様が私の報告書を勝手に書き足していたようです。お手数ですが、『奇数』の行だけお読みください。」

旦那様は、エリザベッタの指示通り奇数行だけを読んだ。すると、本当の姿が浮かび上がった。

「イオリア家の長女であるマリアベル様は…他の姉妹たちは…彼女の手伝いがなければ…自堕落にサボります…豊富であるにもかかわらず…イオリア家は立ちゆかないでしょう…よい影響が出るでしょう…しかるべき処置をしてください。」

旦那様は、この報告書に驚愕し、そして怒りを覚えた。彼が信じていた娘は、実際には妹たちを操り、家庭を掌握しようとしていたのだ。冷酷な計算による偽りの顔は、もはや見過ごすことはできなかった。

結果、イオリア家の当主である旦那様は、娘マリアベルを修道院送りにする決断を下した。彼女の狡猾な行いは、家庭の平和を乱すものと見なされ、修道院という厳粛な環境でその魂を浄化することが求められたのだった。

エリザベッタは、真実が明らかになったことに安堵しつつも、マリアベルの冷たい瞳を思い出しては、彼女の行く末を案じるのであった。修道院送りが彼女にとって救いになるのか、それとも新たな闇を生み出すのか、それは誰にも分からなかった。