「俺は小説家になる」と申しております

雨上がりの虹と君との約束

雨上がりの虹と君との約束

雨上がりの空には、虹が架かっていた。七色のアーチは、まるで幼い頃の僕と君との約束を思い出させるかのようだった。

僕たちは、いつも一緒に過ごしていた。夏の暑い日には、近くの川で泳ぎ、冬の寒い日には、こたつで温まりながら本を読んだ。そんなある日、君が言ったんだ。「大きくなったら、一緒に虹を探しに行こうね。」

僕たちは、その約束を胸に、毎日を過ごした。でも、君は突然、僕たちの前から姿を消してしまった。病気だったんだ。最後の別れの時、君は僕の手を握りしめ、「必ず、虹を探しに行くからね」と、弱々しい声で言った。

それから数年が経ち、僕は君との約束を忘れずにいた。大学に進学し、一人暮らしを始めた。忙しい日々を送る中で、君との思い出は、心の奥底にしまい込まれていた。

ある日、久しぶりに実家に帰省した。子供の頃の思い出が詰まった部屋で、一枚の写真を見つけた。それは、君と僕が一緒に虹を探していた時の写真だった。写真の中の僕たちは、無邪気な笑顔を浮かべていた。

その写真を見て、僕は再び、君との約束を思い出した。そして、君を探しに行くことを決意した。

ネットで調べてみると、虹がよく見られる場所として、とある高原が紹介されていた。早速、その高原へと向かうことにした。

高原に着くと、そこには広大な草原が広がっていた。深呼吸をすると、澄んだ空気が肺いっぱいに広がる。僕は、君を探しながら、高原を歩き始めた。

しばらく歩いていると、一軒の小さな小屋を見つけた。小屋の前には、一人の老婦人が座っていた。勇気を振り絞って、老婦人に声をかけた。

「すみませんが、このあたりで虹がよく見える場所はありますか？」

老婦人は、優しい笑顔で僕を見て言った。

「虹ですか？この高原では、雨上がりの朝によく見られますよ。特に、あの丘の上からは、絶景が楽しめますよ。」

老婦人の言葉を頼りに、丘へと向かった。丘の上からは、眼下に見渡す限りの草原が広がっていた。風が吹き、僕の心を洗い清めてくれるようだった。

しばらく丘の上で景色を眺めていると、突然、空が暗くなり始めた。そして、雨が降り出した。僕は、小屋に戻ろうとしたが、足がすくんで動けなかった。

その時、一筋の光が空を切り裂いた。そして、虹が現れた。それは、今まで見たことのないような、鮮やかな虹だった。

僕は、思わず跪き込んで、虹を見上げた。すると、虹の中に、君の姿が見えた気がした。君も、この虹を見ているのだろうか？

虹は、ゆっくりと消えていった。でも、僕の心の中に、虹の色は永遠に残るだろう。

僕は、君との約束を果たすことができた。そして、君との別れを受け入れることができた。

雨上がりの虹は、僕たちに、永遠の別れなどないことを教えてくれた。

（完）