「俺は小説家になる」と申しております

親友の思い出

親友の思い出

愛しい友よ、いつかまた相会うことがあってくれ、酌み交わす酒にはおれを偲んでくれ。
おれのいた座にもし盃がめぐって来たら、地に傾けてその酒をおれに注いでくれ。

嘆くなよ、お前の番がめぐって来ても、星の下誰にも一度はめぐるその盃。

その言葉が最後だった。戦火に散った友、翔太の残した手紙を胸に、俺は今日も酒を酌み交わす。あの日、翔太はまるで自分の運命を悟ったかのように穏やかに語っていた。「酒を飲むときは、おれを思い出してくれ。おれも、お前のことを忘れない」と。

戦争が終わり、平和が戻ってきた今、俺は毎晩翔太の好きだった酒を一杯注ぎ、彼に捧げる。翔太の言葉通り、地に傾けて彼に注ぐのだ。杯を持つ手が震えるのを感じながら、翔太の笑顔を思い浮かべる。あの日の笑顔が、今でも俺の心を温めてくれる。

翔太が逝ってから一年が過ぎた。彼の故郷では、彼のために慰霊碑が建てられ、多くの人々が集まり彼を偲んだ。俺もその場に立ち、彼の遺影に向かって静かに祈った。涙が溢れそうになるのをこらえながら、俺は心の中で誓った。「翔太、お前の分まで生きる。お前が見たかった未来を、俺が見届ける」と。

ある日、俺は翔太の母親から手紙を受け取った。そこには、翔太が生前に書き残した日記の一部が同封されていた。翔太は、戦場での出来事や仲間たちとの絆を綴っていた。彼の日記を読み進めるうちに、翔太の強さと優しさがますます胸に迫ってきた。彼は戦争の恐怖と悲しみの中でも、常に仲間たちを励まし、希望を持ち続けていたのだ。

翔太の日記を読むたびに、俺は彼の言葉を思い出す。「嘆くなよ、お前の番がめぐって来ても、星の下誰にも一度はめぐるその盃」。翔太は、生きることの意味を教えてくれた。彼の言葉は、俺の心に深く刻まれている。

ある晩、俺はいつものように翔太のために酒を注ぎ、彼に語りかけた。「翔太、今日はお前の命日だ。お前がいなくなってから、たくさんのことがあった。お前の分まで頑張ってきたよ」。酒を地に傾けると、静かに風が吹いてきた。まるで翔太がそこにいるかのように感じた。

俺はこれからも生き続ける。翔太の分まで、彼の夢を背負って。そして、いつかまた彼と再会できる日を信じて。その日が来たら、翔太と酌み交わす酒を楽しみにしながら。翔太の言葉を胸に、俺は前に進み続ける。

戦争の傷跡は消えないが、翔太の記憶と共に生きることで、俺は強くなれる。翔太の笑顔を思い浮かべながら、今日も一日を生き抜く。彼の言葉が、俺の心の支えとなっているのだ。

「翔太、ありがとう。お前のことは、決して忘れない。いつかまた会える日まで、俺はここで生き続ける」。そう誓いながら、俺は夜空の星を見上げた。翔太の魂が、星となって俺を見守ってくれていると信じて。