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だいじょぶ?

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だいじょぶ?

信二は兄に会うたびに、体調を心配されるのが嫌だった。だが、兄の優しさを無碍にするわけにはいかない。

「だいじょぶ?」いっしょに表に出て、荻村はたずねた。「からだ、平気なのかい?」

「え?」信二は少し驚いたような顔をした。

「兄貴が心配してたよ、元気ないからって」

信二は深いため息をついた。兄の一途なお節介には感謝しているものの、それが時折重荷に感じることもあった。健康を気遣われるたびに、信二は自分が弱々しい存在として見られているような気がしてならなかった。

「からだなんて、ひとつも悪かあない」信二は苦笑しながら答えた。だが、その声には微かな苛立ちが滲んでいた。

「そうか? 兄貴は本当に心配してたぞ。最近、仕事も忙しいんだろ?」

「ぜんぜん丈夫ですよ、僕」と信二は言い切った。だが、その言葉には自分自身を納得させるための力が込められていた。

「それならいいんだけどさ、無理するなよ」と荻村は肩を叩いた。「何かあったら、すぐに相談してくれ。俺たちは家族だからさ。」

「わかってる、ありがとう」と信二は微笑んだ。だが、その笑顔の奥にはまだ消えない不安があった。

信二は心の中で、自分の弱さと向き合うことを避けていた。体調の不調や心の重圧を認めることが、彼にとっては敗北を意味しているように感じられた。彼は常に強くあろうとし、自分の問題を他人に見せることを嫌った。

その夜、信二は寝室で一人、天井を見上げながら考え込んでいた。兄の言葉が心に響き続け、彼を悩ませた。確かに、最近は仕事のストレスが増え、体調も優れない日が続いていた。だが、信二はそれを認めることができなかった。

「俺は大丈夫だ、もっと頑張れる」信二は自分に言い聞かせるように呟いた。だが、その言葉には確信が欠けていた。

翌朝、信二は目覚めた時、全身に重たい倦怠感が広がっているのを感じた。頭痛もひどく、起き上がるのが困難だった。それでも、彼は無理にベッドから起き出し、仕事に向かおうとした。

「また無理してるのか」と兄の声が響いた。信二は驚いて振り向くと、兄が心配そうな顔をして立っていた。

「兄貴、どうしてここに?」

「お前のことが心配で来たんだ。見ての通り、無理してるのがわかるだろう」

信二は反論しようとしたが、体が言うことを聞かず、再びベッドに倒れ込んだ。

「もう、無理するのはやめろ。俺たちは家族だ。お前が無理をすれば、俺たちも心配するんだよ」と兄は優しく言った。

信二はその言葉に胸が熱くなり、涙がこぼれ落ちた。「ごめん、兄貴。俺、弱くて…」

「お前は弱くなんかない。強がるのはもうやめろ。本当の強さは、自分の弱さを認めて助けを求めることだ」と兄は信二を抱きしめた。

その日、信二は初めて自分の体調と心の状態を素直に認め、兄の助けを受け入れることにした。それが彼にとっての本当の強さであり、家族の絆を深める一歩となった。

信二はゆっくりとした回復の過程で、兄の存在の大切さに改めて気づかされることになった。彼はもう一人で背負い込むことをやめ、家族とともに困難に立ち向かう決意を固めた。






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