「俺は小説家になる」と申しております

兄弟格差

兄弟格差

薄暗いアパートの一室。兄の亮太は、机に向かい、参考書と格闘していた。大学受験を控えた彼は、日に日に焦燥感を募らせていた。

一方、弟の健太は、テレビゲームに夢中。兄の努力をよそに、無邪気な笑顔を浮かべていた。

亮太と健太は、全く違う性格の兄弟だった。

亮太は真面目で努力家、健太は明るく自由奔放。

両親は、二人の個性を尊重し、平等に接するように心がけていた。

しかし、亮太自身は、健太への劣等感を抱えていた。

勉強も運動も、何でも簡単にこなしてしまう健太。

自分はどうしても彼に追いつけない。

そんな思いが、亮太の心を苦しめた。

ある日、亮太はついに爆発してしまった。

「健太、いつも遊んでばっかりでずるいよ！」

「だって、勉強は苦手だし…」

健太は、困ったように肩をすくめた。

「俺は、もっと頑張らないと…！」

亮太は、悔しさをぶつけるように叫んだ。

その言葉を聞いた健太は、初めて兄の苦悩を理解した。

そして、自分にもできることがあるはずだと決意した。

健太は、兄の勉強に付き合うように。

わからない問題は、一緒に解き、励ましの言葉をかける。

亮太は、そんな健太の存在に支えられ、少しずつ自信を取り戻していく。

受験当日、亮太は緊張しながら試験会場に向かった。

健太は、見送りに玄関で手を振っていた。

「頑張って！」

健太の笑顔に、亮太は勇気をもらった。

試験は、想像以上に難しかった。

それでも、亮太は最後まで諦めずに問題に取り組んだ。

数週間後、合格発表の日。

亮太は、心臓が飛び出しそうなほどドキドキしながら掲示板を見上げた。

自分の名前を見つけ、思わず拳を握り締めた。

合格だ！

亮太は、喜びを爆発させ、健太に抱きついた。

「ありがとう、健太！」

「おめでとう、兄ちゃん！」

二人は、喜びの涙を流した。

兄弟格差は、二人の関係を遠ざけるものではなかった。

むしろ、互いを支え合い、成長するための糧となった。

亮太と健太は、これからもそれぞれの道を歩みながら、兄弟として支え合っていく。

Epilogue
数年後、亮太は大学を卒業し、大手企業に就職した。

健太は、夢だったミュージシャンを目指して、音楽活動を続けていた。

二人は、それぞれの人生を歩みながらも、定期的に連絡を取り合い、互いを励まし合っていた。

兄弟格差は、二人の関係を壊すものではなかった。

むしろ、二人の絆をより強固なものにした。

亮太と健太は、これからも兄弟として、人生を共に歩んでいく。