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悪意の連鎖

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悪意の連鎖

薄暗い路地裏、ゴミ箱の影に潜む男。その目は獲物を狙う獣のようにギラついていた。彼の名は影山、裏社会で恐れられる殺し屋だ。今夜、彼はターゲットを始末する。

ターゲットは、高利貸しの金田。金田は冷酷非情な男で、多くの者を苦しめてきた。影山は、そんな金田に復讐を依頼されたのだ。

影山は、金田の屋敷に忍び込む。暗闇の中、彼は音もなく動き、金田の寝室にたどり着く。金田は深い眠りに落ちている。影山は、ナイフを手にゆっくりと金田に近づいていく。

しかし、その時、影山の背後で物音が聞こえた。振り返ると、そこには金田の妻、美咲が立っていた。美咲は、影山の姿を見て驚き、悲鳴を上げた。

影山は、美咲を殺すつもりはなかった。しかし、美咲の悲鳴によって金田が目を覚ます可能性が高い。そうなれば、計画が台無しになってしまう。

影山は、一瞬の迷いの末、美咲を刺殺してしまう。金田が目を覚ます前に、彼は金田を刺殺する。

そして、それを見ていた瞳がもう一つあった。

ホームアローンの少年のように清らかな目をまん丸にして、口に手を当てて、

息を殺し、あまりの惨劇に目をそらすこともできなかった。

当時5歳の女の子、澪である。

その日以来彼女は、何も聞こえず何も見ようとしない。

あまりの出来事に心が凍り付いてしまったのである。

影山は彼女がいたことを薄々感づいていた。

しかし、殺し屋にも三分の理。

いたいけな子供をどうしても手にかけることはできなかったのである。

二つの命を奪った影山は、夜の闇に溶け込んでいく。

そして、澪に行った罪はもっと悲惨なものだった。

澪は何度も両親が殺された悲惨で残虐なシーンがフラッシュバックする。

鮮明なにおいの伴ったおぞましい記憶は、薄れてはいくのだが児童福祉施設でみんなと楽しく遊んでいるときに突然その記憶は思い出され、しゃがみこんでしまう。耳をふさいで、目を閉じて、何もなかったことにしたいのだ。

「きゃーーー」

一度でも叫べたら、ここまで悲劇はなかったのかもしれない。

5才という自己表現の不確かな年齢が

「なにもなかったー」

とすべてを拒否してしまう。

殺された人には申し訳ないが、転生するなり、天国に行くなり、煉獄で修行するなり、楽園をまつなり、次がある。
でも、この幼子には現実を受け入れ、度重なる悪夢としか言いようのない惨劇の処理が受け入れることも拒絶することもできないまま浮遊霊のように付きまとう。


そして、人にはそれぞれの正義があった。

殺人を依頼した人にはその人の正義。

仕事だとその依頼を受け入れた影山の正義。


**


翌日、金田夫妻の殺害事件がニュースで報道された。警察は捜査を開始するが、犯人の手がかりは掴めない。

一方、影山は事件後、姿を消していた。彼は、自分が犯した罪の重さに苦悩していた。

しかし、影山の苦悩は長くは続かなかった。彼は、再び殺しの依頼を受ける。ターゲットは、金田から金を借りていた男たちだ。

金田の死によって、男たちは借金から解放された。しかし、同時に彼らは、金田の復讐を恐れるようになる。

男たちは、影山に金を払い、自分たちの命を守ろうとする。影山は、男たちの依頼を受け、次々と殺人を犯していく。

**

こうして、影山の悪意の連鎖が始まった。金田の死によって、新たな悪が生まれてしまったのだ。

影山は、殺人を続けることで、次第に人間性を失っていく。彼は、冷酷非情な殺人鬼へと変貌していく。

**

数年後、影山はついに警察に逮捕される。裁判で影山は、自分が犯した全ての罪を自供する。

影山は、死刑判決を受け、刑務所に送られる。彼は、獄中で自分の罪を悔い改めることなく、孤独な死を迎える。

**

影山の物語は、悪意の連鎖がいかに恐ろしいものであるかを教えてくれる。悪意は、決して消えることはない。それは、新たな悪を生み、世界を壊していく。

私たち一人一人が、悪意に立ち向かう勇気を持つことが大切だ。そうしなければ、影山の悲劇は繰り返されてしまうだろう。

神は言う。

「100人いれば100人の正義がある」

「人は人を導けない」

「人は人を裁けない」

澪は今、優しいイエスのみてに抱かれて、児童施設で日々を送っている。

澪が苦しい時、神が自ら背負って洗いて下さいますように。

河津桜の花びらの形や色の違いを楽しめますように。

神の愛をこの美しい地球を通して味わえますように。

私の中にも悪がある。
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