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春秋花壇

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闇の紛れる

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闇に紛れる

東京の夜は、いつものように暗く、静かだった。

高層ビルの灯りは低級民族をあざ笑うかのように煌々と輝き、人々は行き交う。しかし、その光の陰には、闇に紛れる者がいた。

その者は、黒い服を身にまとった、長い髪の男だった。彼は、闇の中に佇み、周囲を警戒するように目を光らせていた。

頭のてっぺんからつま先まで、同一のデザイナーのファッションで固めている。

要するにだ。

自分がいないのだ。自信がないのだ。

ブランドで固めると言うことはそういうことだ。

彼の名は、黒崎　基(もとい)。18歳。

黒崎は、闇の組織に属する犯罪者だった。彼は、盗みや詐欺などの犯罪を繰り返しており、警察に追われていた。

保護観察も20歳までついている。

鑑別所や少年院、少年刑務所にはい入ったことはないが立派なな予備軍だった。

特殊詐欺の受け子さえやったことがある。

今、監禁されていないだけでも儲けもの。

黒崎は、今日もまた、ある仕事を終え、闇に消えようとしていた。

彼は、ビルの影に隠れ、周囲を確認した。そして、人通りが少ない道へと姿を消した。

黒崎は、ひたすら闇の中を歩き続けた。彼は、警察に捕まらないように、慎重に足を運んでいた。

しばらく歩くと、黒崎は、見覚えのある場所にたどり着いた。それは、彼が幼い頃に住んでいた、小さなアパートだった。

黒崎は、アパートの前に立ち止まり、懐かしい思い出に浸った。

彼は、ここで両親と暮らし、幸せな日々を送っていた。しかし、両親は、彼が10歳の時に、交通事故で亡くなってしまった。

黒崎は、両親の死後、孤児となった。彼は、親戚に引き取られることを拒み、一人で生きていくことを決意した。

黒崎は、生きるために、犯罪の世界へと足を踏み入れてしまった。

彼は、犯罪を繰り返すうちに、どんどんと闇に堕ちていってしまった。

黒崎は、再び、このアパートに帰ってくることはないだろうと思っていた。しかし、彼は、今、ここに立っていた。

彼は、このアパートを最後に、闇から抜け出したいと、強く思った。

黒崎は、アパートの中へと入った。

家賃だけは払い続けてきたのである。

ストリートチルドレンの生活からいつの日か舞い戻るため、必死で今日まで生きてきた。

うずたかく積まれた、コンビニ弁当の入ったビニール袋。

袋ラーメンを作ったであろう片手鍋と箸が洗いもしないでシンクの中でカビカビにかびている。

洗濯することもなく、投げ出された下着や洋服、靴下。

「お前、本当に大変だったんだな」

「ほんとによく頑張ってきたよ、お前」

ねぎらうように一つ一つの言葉をかみしめる。

窓を開け放ち空気を入れ替える。

近所のコンビニから大きなビニール袋を買ってくると、

いらないものを入れていった。

入り口の戸もあけ放ち、よどんだ過去を捨て去りたかった。

室内は、荒れ放題だった。家具は倒れ、壁には落書きがされていた。

黒崎は、懐かしさを感じると同時に、切なさを覚えた。

彼は、部屋の片隅に置かれた、古い棚の前に座った。

棚には、彼が幼い頃に遊んでいたおもちゃや、両親からもらった思い出の品々が置かれていた。

黒崎は、棚の中から、ある写真を見つけ出した。

それは、彼が両親と写った写真だった。

黒崎は、写真に目を凝らした。両親の笑顔が、彼の心に染み込んでいった。

黒崎は、両親に、こう言いたくなった。

「俺は、もう闇から抜け出します。俺は、もう犯罪をしません。だから、どうか、俺を許してください。」

今日まで不思議な形で守ってくれてありがとう。

黒崎は、写真にキスをした。そして、写真を入れたアルバムを、胸に抱きしめた。

黒崎は、アパートを出た。

彼は、闇の中に消えていくように、歩き続けた。

その足取りは、決意に満ちていた。

**

黒崎は、その後、犯罪から足を洗い、新しい人生を歩み始める。

彼は、両親の遺志を継ぎ、困っている人々を助けることを、生きがいにしてきた。

MPO法人を立ち上げ、ストリートチルドレンや引きこもりの少年たちの支援をする。

いや、違うな。

共に生きる。

さまざまな闇を受け入れ、折り合いをつける。

変えられるものと変えられるものををわけて行く。

小さな課題を設け、一つずつクリアーしていく。

そうして、自己肯定感を築き、自分を愛すること、大切にすることを覚えていくんだ。

もう無理なんじゃないか。

やっぱり、自分にはできない。

何度もさじを投げそうになった。

その度に、両親の

「大丈夫、お前ならできる」

という言葉が聞こえてきた。

黒崎は、闇から抜け出すことは、決して簡単なことではないことを知っていた。しかし、彼は、決してあきらめずに、前に前にと進み続けた。

そして、黒崎は、いつしか、多くの人々から慕われる、尊敬される存在となっていった。

彼の人生は、決して平坦ではなかった。しかし、彼は、闇に紛れるのではなく、闇を照らす人として、生きることを選んだ。

そして、彼は、その選択を、決して後悔しなかった。

暗い経験は分かち合えば、光を放つことができるんだ。

大切なことは、何回転んだかじゃない。

何回起き上がったかなんだ。

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