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みるく、お前はわたしをひどい男だと思っているのだろう。

そうだな。

知り合ったばかりの頃の君は、

れん君が大好きで、毎日、宝珠取りや

ストーリーやコンテンツを二人で楽しんでいたんだよな。

お揃いのドレアを作って、写真を撮ったり

そんな君をはじめは必至で追いかけた。

何度も手紙を出し、こっちを向かせるのに必死だった。

男はいつでも狩人で狙った獲物を手に入れるのは

最高のゲームだった。

人の心は移ろいやすい。

まして、男と女なんていつの世もシーソーゲーム。

こっちが追いかけている分には、楽しさだけなんだが、

俺の熱情に負けて

性の奴隷に調教されていった君に少しずつ興味がなくなっていく。

まして、ウェディングの写真を撮りたがったり

わたしの本妻と話し合おうとする君がだんだん疎ましくなる。

うざくなる。

気持ち悪いとさえ感じるようになったんだ。

それは君のひたすらな私に対する愛だったのだろう。

このゲームの中には、畑の水やりをする作業があり、

勝手に人の家の畑に水と肥料をまいていく。

お金を出して迄頼むほど

少しでも良いものが収穫できるように工夫する。

そんなこととは知らない私は、

君が好意で畑の水やりに毎日私の家を訪れることが

ストーカー行為のように思えたんだ。

そして、耐えきれなくなった私は引っ越した。

だって、畑の水やりだけじゃなくて

家の中にまで入ってきたから。

その時、私は別な女を家の中に連れ込んで

チャットエッチを楽しんでいた。

あはは、そうさ。

浮気現場に乗り込まれたのさ。

でも、勝手に招待もしてないのに

ずかずかと家の中まで入ってくる君もおかしいだろう。

人って面白いもので、

何があろうが自分が正義。

自分が正しいんだ。

だから、浮気をしていることや

君をだましていることや

君にたくさんの嘘をついてることや

レン君から奪い取って、興味が薄れてることや

釣った魚にはだんだん餌をやることさえ

面倒になることを

すべて、みるく、お前がストーカー

みるく、お前がヤンデレ。

みるく、お前がカサンドラ症候群。

みるく、お前がメンヘラー。

そして、愛するとは理解することと

おまえを責めたてたんだ。

お前はどんどん病んでいく。

わたしの言うことがすべて正しいと

自分を責め始める。

むしばまれていく。

破壊されていく。

「破壊の衝動ですわ!!」

何て愉快なんだ。

何て楽しいんだ。

わたしが望む程度のところで

ブレーキを利かすことができなくて

暴走してくるおまえが悪い。

だって、わたしは、悪魔の申し子ルシファーなんだから。

赤子のようなお前の手をひねり上げるのは小気味いい。

「ふん」

虫けらでも踏みつぶすように

わたしに夢中になっているお前を無視する。

すると、火が付いたように泣き始める。

そりゃあそうだろうな。

凍り付いていたお前の感情を溶かしたのは

わたしなんだから。

最近では、みるく、お前も黙ってはいない。

「誠実さの微塵もないやりちん男」

と、ののしる。

ああ、そうさ。

お前の言う通りさ。

そうやって、人間の心がむしばまれていくことが

何よりの好物なのだから。

うまいなー。

堪能させてもらうよ。

少しくらいなら、また抱いてやってもいいんだぜ。

お前の桜貝のような爪。

わたしをとらえようと必死な長く白い指。

透けるほど色の白い腕。

そよ風になびく長い髪。

白くて細いうなじ。

抱き寄せたくなる鎖骨。

ふくよかできめの細かいつぼみのような胸。

蜂の子のようにくびれたウエスト。

ずっと眺めていたいかわいい桃のようなお尻。

長く伸びたカモシカのような足。

かすかに香る石鹸とシャンプーの匂い。

足の指の一本一本が……。

そうさ、お前は私のとりこ。

ゆっくりと味わわせてもらうよ。

ありがとう。

東京22度。

二月だというのに半袖のTシャツで過ごせちゃう。

白い沈丁花が一つ二つと花をほころばせている。

雨水から啓蟄へ

時は流れ季節は移ろう。

梅、フリージア、ヒヤシンス、水仙、

香りのおもてなしに思わず深呼吸。

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