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桃太郎読んで

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桃太郎読んで

リビングの一角、母と娘が絵本を手に、笑い声が響いていた。娘の真琴は桃太郎の絵本を膝に抱え、満面の笑みを浮かべながら母を見つめている。

「ママ、桃太郎読んで!」真琴はそう言って、期待の眼差しを母に向ける。

母の美香は、微笑みながら絵本を開いた。「昔々、あるところに—」

「もっと渚トラウトっぽく!」

美香は一瞬戸惑ったが、すぐに渚トラウトというゲーム実況者の真似を始めた。低い声で、若干のため息混じりの調子をつけて、軽く肩をすくめた。

「ん、川上から桃が流れてきたね。どんぶらこだって。ふふ、気になるね?大きいのに1人で持ち帰ったんだ、おばあさん。偉いよ。そして切っwwwたらwwwダッッッwww中からエケチェンはwwwねぇだろwwwヒィーwwww」

真琴は大笑いしながら、次はどうしようかと考えている。「もう一回、もっとオタクっぽくやって!」

美香は笑いをこらえながら、再び始めた。「おばあさんが川で洗濯してたんだ。そしたら、なんとまぁ、川上から大きな桃が流れてきたんだよ。これが伝説の『桃』か…どんぶらことか言って、かなりデカイやつね。そんでさ、おばあさんったら一人で持ち帰っちゃうんだ、パワー系女子かよって感じで。で、家に戻って切ったら…おっと、これが出てきちゃったよ、桃太郎。しかも中二病発症中。『俺はこの世を正す者だ!』みたいな。いやいや、何そのセリフ。バトルもののアニメの主人公かよ!」

真琴は手を叩いて大笑いし、満足げな顔をした。「ママ、最高!」

美香は笑いながら絵本を閉じた。「楽しかったね。でも、そろそろお風呂の時間よ。」

真琴はもう一度頼もうとしたが、結局諦めて「また後でね」とうなずいた。

翌日、二人はリビングでまた絵本を広げていた。今日は何にしようかと考える真琴の目がキラキラと輝いている。

「ママ、今日はあにきで読んで!」

美香はしばらく考えてから、今度は「あにき」っぽく読むことに挑戦する。「あぁー、桃太郎の話ね。あるところにじいさんとばあさんが住んでて、じいさんは山へ柴刈り、ばあさんは川へ洗濯。なんでそんな時代に柴なんか刈ってんだ?エネルギーは大事だけどさ、今ならソーラーパネルとかあるだろ?ってまぁ昔の話だからしょうがないんだけど。で、ばあさんが川で洗濯してたら、でかい桃が流れてきて『あにきぃ、こいつはヤバイっすよ!』って感じで、持ち帰って切ったら中からガキンチョが出てきたわけよ。そいつが自分は桃太郎って名乗るんだけど、これがまた負けず嫌いのヤンチャ坊主。鬼退治行くって言い出すんだけど、仲間も集めてねぇのに無茶しやがるってわけ。」

真琴は笑いが止まらず、お腹を抱えていた。「もっともっと!」

「おぉっと、まだあるぞ。桃太郎、イヌ、サル、キジを仲間にして、なんだかんだで鬼ヶ島に行くんだけど、これがまたカオスでさ。鬼たちはもうワンパターンの『ガハハハ!人間ごときが!』とか言ってくるわけ。しかも金棒とか持ってるんだぜ?桃太郎たちは小判とか巻き上げてさ、もう現代だったら完全にヤクザだよな、やってること。まぁ、最終的に鬼退治して無事に帰ってくるんだけど、あいつらマジでどうなってんのかね?法とかそういうのない時代だったからなぁ。」

真琴は息を切らしながら「すごい、すごい!次は、ないこくんで!」

美香は再び立ち上がり、気合いを入れ直す。「はぁいどうもないこです!気付けば鬼退治やってまぁす!って何でやねん、なんで俺だけ行かなあかんねん。おかしいやろっ!桃太郎って名前だからって、なんで鬼退治せなあかんの?しかもイヌ、サル、キジがいるからって、あいつら戦力になるんか?いやいや、むしろ足引っ張ってるやろ。イヌ、サル、キジのメンバー構成でよく鬼ヶ島行こうなんて思ったよな、無理無理。」

真琴は涙を流しながら笑っていた。「ママ、ほんとすごいよ!もっとやって、もっと!」

母と娘のやり取りは終わることなく続く。二人の声はリビングに響き渡り、その楽しさが家中を包み込んでいた。こんな日常のひとときが、二人にとって何よりの宝物であることは言うまでもなかった。真琴のリクエストに全力で応える美香。これが、二人だけの特別な時間だった。










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