ありがとうの詩

春秋花壇

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ラーメンの味が教えてくれたこと

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「ラーメンの味が教えてくれたこと」

今日はいつもと違う日だった。お米が高くて、もう数日分の食事をどうしようかと悩んでいた。スーパーに行くと、米の棚は空っぽに近い。どの銘柄も値段が上がり、手が出せない。仕方なく、袋ラーメンを手に取ることにした。

「サッポロ一番、じゃなかったのか…」棚に並んでいたのは、いつものものではなく、見慣れないブランドの袋ラーメンだった。普段はあの黄色い袋のラーメンが大好きで、あのシンプルな塩味が何とも言えない安定感を持っていた。しかし、今日はそれが見当たらなかった。仕方なく、別の袋ラーメンを手に取ってレジへ向かう。

家に帰ると、荷物をおろし、台所に向かう。もう夕方になっていて、腹が減って仕方ない。冷蔵庫を開けてみると、もやしとほうれん草、そして卵しかない。これらを使ってラーメンを作るしかない。

「うーん、どうにかなるかな。」手際よくお湯を沸かし、袋ラーメンを開けると、見た目が少し違うことに気づいた。いつものラーメンのスープは、シンプルでありながら深みがあったが、今日のスープはどうも色が濃い。少し重たいような、油っぽさを感じる。

もやしを軽く炒め、ほうれん草もさっと茹でて、卵を溶いて準備を進める。スープを加えて、いよいよラーメンの完成だ。ラーメンを丼に注ぎ、具を盛りつけると、見た目はまぁまぁ満足できるものになった。あとは食べるだけだ。

「いただきます。」箸を取ると、一口目から少し驚いた。スープが想像以上に濃い。あまりにも脂っこくて、こってりしすぎている感じがした。ラーメンのスープの中で、何か違和感を覚える。

「うーん、やっぱりあまりおいしくない。」呟きながらも、なんとか食べ進めるが、思うように箸が進まない。やはり、いつものサッポロ一番の塩ラーメンのあの味とは全く違っていた。あの塩気の中にほんのり感じる甘さと、麺の滑らかな喉ごしが、今では遠い昔のことのように思えた。

目の前のラーメンが、安価で手に入るとはいえ、心の中で少し不満が湧き上がってきた。やはり食べ慣れたものが一番だと実感する。だが、目の前の現実はそう簡単に受け入れられない。袋ラーメンは確かに安く、すぐに食べられる。しかし、その味わいにはどこか不満が残る。特に、今日はその不満がさらに強く感じられる。

食べ終わり、食器を片付けながら、考える。ふと、スーパーで見た値段を思い出した。サッポロ一番の塩ラーメンは、いつもは100円を切っていたが、最近の物価上昇で、1袋が110円になっていた。その差額が気になる。

「何だかな…」と呟く。あの値段であのラーメンを売っている企業が、あくどい儲け方をしているように思えて、少し腹が立った。確かに、企業は利益を上げることが重要だろうが、生活必需品の価格がこれ以上上がるのは、正直しんどい。

「どうしてこうなったんだろう?」思わず空を見上げる。最近、あらゆる物の価格が上がり、どこもかしこも不安定になっている。スーパーに並ぶ商品一つ一つに、どれだけの人々の汗と涙が込められているのかを考えたとき、食べ物を買うことすら躊躇われる気分になる。

ふと、心の中で思い至る。「まぁ、ラーメン一つに何をそんなに…」と、ちょっと笑ってしまった。結局、ラーメンはあまりおいしくなかったが、それでも食事が取れたことに感謝しなければいけないのだろう。

その夜、布団に入ると、ふとあのラーメンの味が浮かんできた。スープのこってりした油っぽさが口の中に残り、もやしとほうれん草が少しだけありがたみを感じさせた。それでも、どこか物足りない味だった。

「明日こそ、良い米を買いたいな。」そんなことを考えながら、目を閉じる。物価の高騰が続く中で、少しでも安心して食事ができる日が来ることを願って、眠りに落ちた。

食べるものがあるだけでも感謝なんだろうな。

ありがとございます。






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