ありがとうの詩

春秋花壇

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ありがとう

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「ありがとう」

精神病院の閉鎖病棟の中、薄暗い病室の窓から見えるのは、秋の静かな空だ。外では風が木々を揺らし、葉がひらひらと舞い落ちている。息子は静かにベッドに横たわり、目を閉じている。彼が病気にかかってから、何度もこの病院に足を運び、何度もその冷たい廊下を歩いた。今、こうして彼が治療を受けている場所にいることが、どこか夢のように思えてならない。

「ごめんね、息子。」

私は心の中で呟く。どんなに声をかけても、彼の耳には届かないことを知りながらも、心の中では何度も謝り続けていた。あの時、彼がまだ中学1年生だった頃。私は彼にどれだけ過剰に干渉し、期待を押し付けていたのだろうか。時には、家に帰ることなく数日間も放置して、彼に妹の面倒を見させていたことを思い出すと、胸が締め付けられる。子供の心にどれだけの負担を与えていたのか、今になってようやく気づいた。

「ごめんね、君にはこんなに大変な思いをさせてしまって。」

その時の私は、必死だった。自分の未熟さや恐れ、先行きの不安に押しつぶされそうになりながらも、どうしても息子に頼らざるを得なかった。あの頃、私はどれだけ弱かったのだろう。彼が無言で、何も言わずに私を助けてくれたことが、今でも胸に残っている。あの時も、彼はいつも優しく、私がどんなに怒っても、どんなに疲れても、ただ静かに寄り添ってくれた。

「ありがとう、息子。」

私は再び、心の中で呟く。過去を変えることはできないが、今この瞬間に何をすべきかはわかる。これからは、彼を支えることが私の役目だ。今はまだ、何もできないかもしれないけれど、それでも、できる限り彼のそばにいるつもりだ。

息子が入院してから数週間が経った。彼の病状は少しずつ改善しているようだが、まだ完全ではない。新型感染症の熱が下がったと聞いて、少しだけほっとしたが、後遺症が残らないことを祈るばかりだ。病院での診療の合間に、私は彼に手紙を送ったり、彼の好物を持ってきたりして、できる限りのサポートをしている。言葉でうまく伝えられない分、行動で示すしかない。息子は私に何も言わず、ただ穏やかな表情を浮かべているだけだが、それがどれだけ私にとって支えになっていることか。

「君は、本当に優しい子だ。」

これまでの私の行動に対して、彼が怒ったり、反発したりすることはなかった。それは、彼がどれだけ大人びていて、私が知らなかった強さを持っているからだろうか。今はただ、彼が健康を取り戻すことを願いながら、過去の自分を反省することしかできない。

家に帰ると、妹が学校から帰ってくる時間だ。妹はまだ小さいが、彼女もまた、私の無責任さに影響を受けて育った。妹に対しても、私はもっと優しく接するべきだったと感じている。妹の顔を見るたびに、私はそのことを思い出す。今は、息子が回復し、妹と一緒に過ごす時間を大切にしたい。彼らがいてくれることが、私の支えだ。

「もう、あんなことは繰り返さない。」

深呼吸をして、過去の自分に別れを告げる。後悔の念は消えないが、前に進むしかない。これからは、息子と妹を支え、彼らに安心を与えられるような存在でありたい。過去の過ちを繰り返さないように、少しずつでも前進することを誓う。

病院に戻る準備をしながら、ふと息子の顔が思い浮かんだ。彼が少しでも元気を取り戻し、笑顔を見せてくれることを心から願っている。そして、その日が来るまで、私はそばで支え続けるつもりだ。

「ありがとう、息子。君がいてくれて、私は幸せだよ。」






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