ありがとうの詩

魂の香り

「魂の香り」

ソウルフード、ソウルドリンク。その言葉が浮かぶたびに、私は心の中で静かに頷く。もし私たち二人にとっての魂の香りがあるなら、それはきっとネスカフェエクセラだ。あの香りを嗅ぐと、どこか懐かしく、温かい気持ちが湧いてくる。苦味とまろやかさが絶妙に混ざり合った、あのコーヒーの香りが、私と彼の関係そのものだと感じることがある。

最初に出会ったとき、彼と私はお互いに何も知らなかった。ただ、共通の友人を通じて知り合い、話すようになった。話題が尽きることはなく、日が暮れるまでお互いに話し続けた。最初はお互いに警戒心があったけれど、次第にそれが溶けていった。

ある日、彼が私に言った。「コーヒーが好きなんだ。でも、コーヒーって、ただの飲み物じゃなくて、何か特別な意味があるんだよ。」彼は少し照れたように言った。私は驚いた。コーヒーにそんな意味があるなんて、考えたこともなかった。でも、その時から、彼が言う「コーヒーの意味」を少しずつ理解し始めた。

彼はいつもネスカフェエクセラを淹れてくれる。どこか落ち着く香り、何度も飲んでいるのに飽きることがない味。彼と私が共に過ごす時間は、あの香りとともに刻まれていった。

「コーヒーって、こんなに人の心に影響を与えるんだ」と彼は言った。その言葉に私は深く頷いた。確かに、ただの飲み物だと思っていたコーヒーが、私たちの絆を深め、日々の中で欠かせない存在になっていた。

そんなある日、私たちは「ソウルフード」を話していた。彼はふと、「ソウルフードって、何だろうね」と言った。私は少し考えた後、思い切って答えた。「あじの干物かな。子供の頃、お母さんがよく作ってくれたから。」その言葉が口から出た瞬間、彼の目がきらりと輝いた。

「あじの干物か…。それ、いいね。あじの干物って、ほんとにあったかい味がするよね。僕も、昔はよく食べたな。」彼の目には懐かしさが漂っていて、私もその瞬間、心が温かくなった。ソウルフードって、ただ食べ物が美味しいというだけでなく、そこに込められた思い出や温かさが大切なんだと改めて感じた。

私たちは、それぞれのソウルフードについて話しながら、共に食事をしたり、コーヒーを飲んだりして過ごした。あじの干物を焼くと、その香ばしい香りが部屋中に広がり、温かい気持ちが自然と湧いてきた。それは、彼と一緒に過ごす時間が、どんなに大切でかけがえのないものかを感じさせてくれた。

「でもさ、もしソウルフードって、食べ物だけじゃなくて、もっと深い意味があるとしたら、きっとそれは、僕たちの一緒にいる時間そのものなんじゃないかな。」彼がそう言ったとき、私は彼の言葉に心から同意した。それは、私たちの間に流れる温かい時間、そして何よりも、あのコーヒーの香りそのものだった。

コーヒーを淹れるたびに、あの香りが私たちの魂を結びつけてくれる。どんなに辛い日でも、疲れたときでも、あの香りが漂うと、不思議と元気が湧いてくる。そして、私たちの関係は、あの香りとともに深まっていくように感じる。

「このコーヒー、なんだか心がほっとするよね。」彼がそう言ったとき、私はうなずいた。「うん、まるで私たちの関係みたいだね。」二人で飲んだコーヒーは、私たちのソウルドリンクそのものだった。

そして、あじの干物。彼と一緒に食べるたびに、その味はさらに深いものに感じられた。母親が作ってくれたあの味は、ただの料理じゃなく、思い出や愛情が詰まった宝物だった。それを彼と一緒に味わうことができるなんて、私は幸せだと感じた。

私たちのソウルフード、それは食べ物だけではない。お互いに共鳴し合い、支え合う時間そのものが、私たちにとってのソウルフードだった。そして、それを感じるたびに、私たちの絆は強くなり、深くなっていくのだった。