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生かされてきた
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生かされてきた
私は14歳のとき、初めて精神病院に足を踏み入れた。その瞬間から、私の人生は少しずつ、確実に変わっていった。あれから56年。今、こうして無事に生きていることが、どれほど奇跡的なことなのか、時折振り返るたびに涙がこぼれそうになる。
14歳の私は、自分がなぜそんな場所にいるのか、理解できなかった。もちろん、何が私をそうさせたのか、今でも完全に理解できているわけではない。でも、心のどこかで「私はどこかおかしい」と感じていた。周りの世界と自分の感覚が、どうしても一致しないような気がしていた。友達との関係も、家族との関係も、うまくいかないことが多かった。何もかもがうまくいかず、心の中があまりにも空虚だった。
そのころ、精神的な痛みと肉体的な痛みが入り混じったような気持ちで、病院に足を運んだ。その場所では、いろんな人がいる中で、私もまた一つの「症例」として扱われた。先生たちは親切に見えたけれど、私の心の深い部分を理解してくれるようには感じられなかった。その時はただ、治療を受けることが義務であるような気がしていた。
そして、薬が処方され、カウンセリングが始まった。最初はそれが本当に効くのかどうか、疑問に思うことも多かった。でも、少しずつ、自分の気持ちを他の人と話すことが少しだけ楽になり、心の中にわずかな希望の光が差し込んでくるのを感じることができた。あの時の感覚は今でも忘れられない。誰かが私の痛みを少しでも分かってくれるような、そんな気がしたからだ。
時は流れ、何度も心が折れそうになり、また立ち直り、そしてまた挫けそうになることを繰り返しながら、私は生きてきた。精神的な波は何度も私を襲い、暗闇の中で自分を見失いそうになることもあった。でも、どんなに深く落ち込んでも、私は生き続けた。なぜなら、私は「生かされてきた」のだという実感があったから。
私を支えてくれたのは、家族や友達だけではなかった。私は心のどこかで、「神」にも守られてきたと感じていた。無力な自分を感じることもあったけれど、そのたびに、神が何かしらの形で私を助けてくれている気がした。私は宗教的な深い知識があるわけではないけれど、日々の生活の中で、小さな奇跡に助けられ、支えられてきたことが多い。
そして、何よりも私を救ったのは「子供たち」だった。私は結婚して子供を育てることができた。その子供たちは私にとって、何よりも大切な存在だった。最初は、子育てがこんなにも大変だと思わなかったけれど、子供たちと過ごす時間が、私にとって生きる力となった。彼らが私にくれる笑顔、優しさ、そして時には涙。それが私の心を支えてくれた。自分がどんなに疲れていても、子供たちと一緒に過ごす瞬間が、私に生きる力を与えてくれた。
子供たちに感謝し、家族に感謝し、そして何よりも、私をここまで生かしてくれた「神」に心から感謝している。もしあの時、精神病院に行かなかったら、もしあの時、誰かが私に支えの手を差し伸べてくれなかったら、私はどうなっていただろうかと考えることもある。でも、考えてみると、その時々に助けてくれた人たち、そして支えてくれた全ての存在が、私を生かすために必要なものであり、私の人生の一部だったのだと気づく。
56年という歳月は、長いようで短い。過ぎてしまうと、あっという間のようにも感じる。でも、その間には喜びや悲しみ、絶望や希望、すべてが詰まっている。どんなに苦しい時も、どんなに泣きたくなる時も、私はそのすべてを乗り越えた。そして、今、こうして生きている自分を誇りに思う。
生きていることが当たり前だと思っていた時期もあった。でも、今では毎日が奇跡のように感じる。明日があることが、どれほどありがたいことかを、ようやくわかるようになった。これからも、どうしてもつらい日が来るかもしれない。でも、その時には、過去に支えてくれた人たちや、今ここにいる家族、そして自分自身を思い出し、また前に進む力をもらえることを信じている。
生きることは、きっと簡単なことではない。でも、それがどれだけ貴重なことかを、私は痛いほど実感している。56年という時間、私は多くの人々に支えられ、愛されてきた。そして、今、こうして生きていることに心から感謝し、私は生かされてきたことに、深く感謝の気持ちを捧げる。
終わり
私は14歳のとき、初めて精神病院に足を踏み入れた。その瞬間から、私の人生は少しずつ、確実に変わっていった。あれから56年。今、こうして無事に生きていることが、どれほど奇跡的なことなのか、時折振り返るたびに涙がこぼれそうになる。
14歳の私は、自分がなぜそんな場所にいるのか、理解できなかった。もちろん、何が私をそうさせたのか、今でも完全に理解できているわけではない。でも、心のどこかで「私はどこかおかしい」と感じていた。周りの世界と自分の感覚が、どうしても一致しないような気がしていた。友達との関係も、家族との関係も、うまくいかないことが多かった。何もかもがうまくいかず、心の中があまりにも空虚だった。
そのころ、精神的な痛みと肉体的な痛みが入り混じったような気持ちで、病院に足を運んだ。その場所では、いろんな人がいる中で、私もまた一つの「症例」として扱われた。先生たちは親切に見えたけれど、私の心の深い部分を理解してくれるようには感じられなかった。その時はただ、治療を受けることが義務であるような気がしていた。
そして、薬が処方され、カウンセリングが始まった。最初はそれが本当に効くのかどうか、疑問に思うことも多かった。でも、少しずつ、自分の気持ちを他の人と話すことが少しだけ楽になり、心の中にわずかな希望の光が差し込んでくるのを感じることができた。あの時の感覚は今でも忘れられない。誰かが私の痛みを少しでも分かってくれるような、そんな気がしたからだ。
時は流れ、何度も心が折れそうになり、また立ち直り、そしてまた挫けそうになることを繰り返しながら、私は生きてきた。精神的な波は何度も私を襲い、暗闇の中で自分を見失いそうになることもあった。でも、どんなに深く落ち込んでも、私は生き続けた。なぜなら、私は「生かされてきた」のだという実感があったから。
私を支えてくれたのは、家族や友達だけではなかった。私は心のどこかで、「神」にも守られてきたと感じていた。無力な自分を感じることもあったけれど、そのたびに、神が何かしらの形で私を助けてくれている気がした。私は宗教的な深い知識があるわけではないけれど、日々の生活の中で、小さな奇跡に助けられ、支えられてきたことが多い。
そして、何よりも私を救ったのは「子供たち」だった。私は結婚して子供を育てることができた。その子供たちは私にとって、何よりも大切な存在だった。最初は、子育てがこんなにも大変だと思わなかったけれど、子供たちと過ごす時間が、私にとって生きる力となった。彼らが私にくれる笑顔、優しさ、そして時には涙。それが私の心を支えてくれた。自分がどんなに疲れていても、子供たちと一緒に過ごす瞬間が、私に生きる力を与えてくれた。
子供たちに感謝し、家族に感謝し、そして何よりも、私をここまで生かしてくれた「神」に心から感謝している。もしあの時、精神病院に行かなかったら、もしあの時、誰かが私に支えの手を差し伸べてくれなかったら、私はどうなっていただろうかと考えることもある。でも、考えてみると、その時々に助けてくれた人たち、そして支えてくれた全ての存在が、私を生かすために必要なものであり、私の人生の一部だったのだと気づく。
56年という歳月は、長いようで短い。過ぎてしまうと、あっという間のようにも感じる。でも、その間には喜びや悲しみ、絶望や希望、すべてが詰まっている。どんなに苦しい時も、どんなに泣きたくなる時も、私はそのすべてを乗り越えた。そして、今、こうして生きている自分を誇りに思う。
生きていることが当たり前だと思っていた時期もあった。でも、今では毎日が奇跡のように感じる。明日があることが、どれほどありがたいことかを、ようやくわかるようになった。これからも、どうしてもつらい日が来るかもしれない。でも、その時には、過去に支えてくれた人たちや、今ここにいる家族、そして自分自身を思い出し、また前に進む力をもらえることを信じている。
生きることは、きっと簡単なことではない。でも、それがどれだけ貴重なことかを、私は痛いほど実感している。56年という時間、私は多くの人々に支えられ、愛されてきた。そして、今、こうして生きていることに心から感謝し、私は生かされてきたことに、深く感謝の気持ちを捧げる。
終わり
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