ありがとうの詩

春秋花壇

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壊れた鏡

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「壊れた鏡」

私は目の前に置かれた古びた鏡を見つめていた。そこにはひび割れた私の姿が映っている。
かつての私は完璧な母親ではなかったけれど、どんなに辛くても、家族を守りたいという一心で生きてきた。だけど、今の私は壊れた鏡そのものだ。映る姿は不格好で、どこか歪んでいる。

「愛している」
「心配している」
「生きていてほしい」

ただそれだけの願いだったのに、私は間違いを繰り返した。君を守りたいという気持ちが空回りし、いつの間にか君の重荷になっていたのかもしれない。

君が閉鎖病棟に入院してから、私は共依存症という言葉を知った。
「親がちゃ」――子供時代に抱えた心の闇が原因なのかもしれない。でも、原因が何であれ、私は変わらなければいけないと決意した。君のために、自分のために。

電話の向こうで君の声が響く。
「帰りたい」
それだけの言葉が、私の胸に突き刺さる。帰りたくても帰れない。医療保護の解除はそう簡単ではないことを、私は痛いほど知っているからだ。

22日ぶりに面会した君の姿は、私の想像をはるかに超えていた。目は虚ろで、肩は細くなり、言葉もかすれる。
「辛かったね、しんどかったね、よく耐えたね」
その言葉に、君はわずかに微笑んだ。それだけで、私の中の壊れた部分が少しだけ癒えた気がした。

私の中には悪魔がいる。
「君のカードを使えば、この苦しい状況を抜け出せるかもしれない」
そんな声が頭の中で響くたびに、私はその誘惑を振り払う。手癖の悪さが消えたわけではないけれど、君を裏切ることだけは絶対にしたくない。
だから毎日祈る。
「ああ、助けてください。守ってください」

君が買ってくれたお米が残り少なくなった。炊いてしまえばなくなってしまう。でも、食べ物がない生活は、これまでの私たちが何度も経験してきたことだ。きっとこれも乗り越えられる。

「壊れた鏡」は戻らない。
だけど、新しい鏡を作ることはできるはずだ。君が面会のたびに少しずつ目を合わせてくれるようになった。それは、私たちが壊れた関係を修復し、新しい形を作ろうとしている証なのだと思う。

君が生まれてきてくれてありがとう。
君が生きていてくれてありがとう。

この言葉を心に刻み、私はまた新しい一日を迎える。壊れた鏡のかけらを集めながら、一歩ずつ前に進んでいく。






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