ありがとうの詩

息子を返してください 21日目

息子を返してください　21日目

美奈子は、病院の冷たい廊下に座り込み、震える手で手帳を開いた。そこには、浩太へのメッセージがびっしり書き込まれていた。「元気にしてる？ 毎日お母さんはここに来てるよ。早く会いたいな。」「好きな本を持って行ったから、読んでね。」「美味しいケーキを買ってきたよ。一緒に食べたいな。」

どれもこれも、浩太に届くことのないメッセージばかり。美奈子は、手帳に顔を埋め、声を上げて泣いた。

21日間、浩太に会うことができず、彼の様子も分からずにいる。病院からもらえる情報も、ただ「安定している」という言葉ばかりで、具体的なことは何も教えてくれない。美奈子は、息子のことを心配でたまらなかった。

「先生、お願いです。息子に会わせてください。少しでも、彼の顔が見たいんです。」

美奈子は、担当医にすがるように懇願した。しかし、医師は厳しい表情で言った。

「美奈子さんは、彼のことを本当に思っていらっしゃるのでしょう。でも、今は、浩太君が治療に集中できる環境を作ってあげることが大切です。面会は、彼の回復を遅らせる可能性もあるのです。」

医者の言葉に、美奈子の心は打ち砕かれた。

「でも、このままじゃ、浩太は私を嫌いになってしまうかもしれない。私が彼のそばにいないと、彼は孤独を感じてしまうかもしれない。」

美奈子は、そう叫びながら、病院の廊下を走り出した。

夜空には、無数の星が輝いていた。美奈子は、ベンチに座り、夜空を見上げた。

「浩太、どこにいるの？ 大丈夫かな？」

美奈子は、心の中でそう呟いた。そして、静かに目を閉じた。

しばらくして、美奈子は決意を固めた。

「私ができることは、ただ一つだけ。それは、浩太を信じること。そして、彼がいつか必ず回復してくれることを信じること。」

美奈子は、深呼吸をして、病院の入り口へ向かった。

翌日、美奈子は再び病院を訪れた。そして、受付で、あることを告げた。

「私は、息子を信じています。そして、いつか必ず彼は回復すると思っています。だから、私はこれからも、彼のことを諦めません。」

美奈子の言葉に、受付の職員は静かに頷いた。

その日から、美奈子は、病院の窓の外から、浩太のいる病棟を見つめるようになった。何もできない、ただ見守るだけ。それでも、美奈子は毎日、病院に通い続けた。

ある日、美奈子は、遠くから浩太の姿を見つけた。窓際に立っている浩太は、うつむいて何かを見つめていた。美奈子は、その姿を見て、思わず涙が溢れた。

「浩太……」

美奈子は、静かに彼の名前を呼んだ。

すると、浩太はゆっくりと顔を上げ、美奈子の方を見た。そして、わずかに微笑んだ。

その瞬間、美奈子の心は、温かい光で満たされた。

この物語は、精神疾患を抱える息子を持つ母親の愛と葛藤を描いています。美奈子は、息子を救いたいという一心で、様々なことを試みますが、なかなか思うようにいきません。しかし、最終的には、息子を信じることの大切さを学び、希望を見出すという物語です。

この物語をさらに発展させるために、以下の点を検討してみてはいかがでしょうか。

浩太の視点: 浩太の心の内を描き、美奈子との関係性を深める。
治療の過程: 浩太の治療過程を詳細に描くことで、読者に現実感をを与える。
周囲の人々の反応: 家族や友人、病院のスタッフなど、周囲の人々の反応を描くことで、物語に深みを与える。
社会問題との関連: 精神疾患に対する社会の偏見や、医療体制の問題などを描くことで、読者に考えさせられるきっかけを与える。
この物語を起点に、様々な角度から物語を展開させてみてください。