ありがとうの詩

大人と子供分けるプログラム

「大人と子供分けるプログラム」

君が子供のころ、君は洋子ちゃんと一緒に、庭に植えたばかりの球根を掘り起こした。小さな手で土を掘り返しては、「何日たっても芽も出てこないから」と言って、花が咲くまで待つことの意味がわからなかったんだろう。君は素直で、すぐに結果を見たがっていた。

その日、君と洋子ちゃんは、深い穴を掘り返し、球根をまた土に埋めた。翌日、君は何度もその場所を見に行ったけれど、やっぱり芽は出なかった。君の小さな目には、待つことがこんなにも難しいなんて思いもしなかっただろう。でも、今思えば、その時の君の顔はとても真剣で、少し悲しそうだった。

その後、君は花が咲くまで待つことの大切さを知らなかった。もちろん、僕も君にどうしても教えられることは少なかった。でも、君が気づくべきは、ただ「待つこと」ではなく、「続けること」だということだった。

あのころの君と洋子ちゃんのような「待つこと」が、今の君にはどれだけ必要なのか、それを心の中で実感する時が来た。

時が過ぎ、君が大人になった頃、僕たちは「大人と子供」を分けるプログラムを受けることになった。それは、新しい社会で生きていくための「基準」を教えるプログラムだった。君は、実際には全然期待していなかったけれど、何かを変えたくて、プログラムに参加することを決めた。

最初の数回は、全く面白くなかった。毎日同じような内容で、大人としての常識を身につけることに悩み、プログラムの参加者同士で競い合う中で、君は無意識のうちに自分自身を見失っていた。でも、ある日、ふと気づいたことがあった。

それは、プログラムが「待つこと」や「続けること」にこだわっているということだった。仕事でも人間関係でも、思った通りに進まないことがあって、それがどれだけ辛くても、すぐに結果を求めるのは無意味だと気づいたんだ。

ある日、君はプログラムの参加者の中で、年上の男性と話していた。その男性は、君に向かってこう言った。

「君が何をしようとしても、結果を急ぐなよ。どんなに努力しても、花が咲くのには時間がかかるものだ。」

その時、君は昔のことを思い出した。あの球根を掘り返した日を。そして、その男性が言っていることが、ようやく自分の中で繋がった。

「待つことが大切なんじゃない。続けることが、花を咲かせるんだ。」

君はその瞬間、自分の中で何かが変わったことを感じた。今まで何度も諦めかけたことがあったけれど、それを続けることが、大人への一歩だと気づいたんだ。

プログラムが進むにつれて、君は少しずつその意味を理解していった。結果を急がず、無駄に思える時間をどう使うかが大切だと。もちろん、すぐに結果が見えないからこそ不安になることもあるけれど、その不安を乗り越える力をつけることが本当に大事だと。

君が子供のころ、洋子ちゃんと一緒に球根を掘り返していた日のことを、君は今でも覚えている。そして、今度は自分が大人になり、その時に気づいたことを実践しようとしている。花が咲くには、やっぱり待つことが必要だ。でも、その待ち続ける力がなければ、花は咲かない。

君はその時、確かに感じたんだ。大人と子供を分けるものは、結果を急がないこと、そして続けることだと。

君は今、静かにその球根を思い出し、心の中で笑っている。きっと花は咲く。いつか、ちゃんと咲く。