注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
239 / 292
小説

彩香の毎日

しおりを挟む
彩香の毎日

私の名前は彩香。17歳で、注意欠陥多動性障害(ADHD)を抱えている。世間では、普通の高校生と同じように見られることが多いけれど、実は毎日が戦いだ。外からはわからない「易疲労性」という重いハンデを背負って生きている。

天気が悪くなると、いつもより体がだるく感じる。低気圧の影響で、頭が重くなるのだ。学校に着くと、教室のざわめきや、他の生徒たちの笑い声が私の脳に押し寄せてくる。すぐに脳疲労を感じる。人の声、机が引きずられる音、窓を叩く雨音——それらすべてがまるで音の洪水のように感じられ、息が苦しくなる。

10Kのお米を首から背中にしょっている感じ。

姿勢を保つことも難しい。授業中に椅子に座っていると、数分後には体が重たくなり、腰が痛くなる。注意を集中させようとしても、背中は丸まり、疲れがどんどん溜まっていく。教科書の文字がぼやけ、頭の中で考えがまとまらない。「大丈夫、頑張って」と自分に言い聞かせるが、その度に心身のエネルギーを消耗してしまう。

満足のいく睡眠を取ることもできない。夜、布団に入ると、さまざまな音や考えが頭の中を巡る。時計の針の音や、外から聞こえる車のエンジン音が耳に障る。静寂が訪れず、心が休まることがない。そのため、朝起きたときにはすでに疲れ切っていて、また新たな一日が始まると思うと、気持ちが沈んでいく。

学校では、周囲に合わせようと必死になっている。クラスメートが自然に振る舞う中で、私はいつも神経を擦り減らしている。授業中に友達とおしゃべりしていると、楽しそうに見えるけれど、私にとってはその間も「周囲に合わせなければ」と思い続けることがストレスだ。

休み時間になると、私の心は緊張でいっぱいになる。友達が楽しそうに笑い合っていると、心のどこかで孤独感が広がってくる。「もっと会話に参加したいけど、何を話せばいいのかわからない」。そんな思いが募り、ついには口を閉ざしてしまう。周囲の雰囲気を読み取ることが得意な私だが、それは逆に心を消耗させる要因でもあった。

クラスの中で、私と同じような悩みを抱える友達はいないかと探してみるが、なかなか見つからない。みんなが普通に見えるのに、どうして私だけがこんなに疲れるのかと思うと、涙が出そうになる。そんなとき、カウンセラーの言葉を思い出す。「あなたは自分のペースで進んでいいのよ」と、優しい声で励まされた。その言葉が心の支えになっていた。

放課後、友達と帰ることにした。彼女たちが何気なく話す言葉が、私にとっては難解なパズルのように感じられる。でも、少しでも一緒にいることで、心が安らぐ瞬間もある。「一緒にいるだけでいいんだ」と、自分に言い聞かせてみる。

家に帰ると、すぐに疲れがどっと押し寄せる。宿題をする気力もなく、ベッドに倒れ込む。目を閉じると、あの学校での出来事が次々と浮かんできて、自己否定感が広がっていく。「また失敗した」と自分を責める。けれど、心の奥では「もう少し頑張ってみよう」と願う自分もいる。

そんなある日、学校での出来事をつぶやくブログを始めてみることにした。自分の気持ちを言葉にすることで、少しでも楽になれるのではないかと思った。何かしらの気持ちを吐き出すことで、少しでも前に進めるのではないかと感じた。読者がいるかどうかわからないけれど、私自身の心の整理をすることができた。

ブログを書き続けるうちに、同じような悩みを抱える人たちからのコメントが届くようになった。「私も同じように感じている」と共感の声が寄せられると、少しだけ心が軽くなった。この世界には、私と同じように悩んでいる人がいるのだと知ることで、孤独感が少し和らいだ。

その日から、私は自分自身のペースで、ゆっくりと前に進むことを決めた。疲れた時は無理をせず、休むことを許す。時には自分の弱さを受け入れ、少しずつ成長していければと思う。私は私でいいのだと、自分に言い聞かせている。

この小説では、彩香の内面の葛藤や成長を描いています。感想はいかがでしょうか?






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

かあさんのつぶやき

春秋花壇
現代文学
あんなに美しかった母さんが年を取っていく。要介護一歩手前。そんなかあさんを息子は時にお世話し、時に距離を取る。ヤマアラシのジレンマを意識しながら。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

生きる

春秋花壇
現代文学
生きる

“K”

七部(ななべ)
現代文学
これはとある黒猫と絵描きの話。 黒猫はその見た目から迫害されていました。 ※これは主がBUMP OF CHICKENさん『K』という曲にハマったのでそれを小説風にアレンジしてやろうという思いで制作しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

日本史

春秋花壇
現代文学
日本史を学ぶメリット 日本史を学ぶことは、私たちに様々なメリットをもたらします。以下、そのメリットをいくつか紹介します。 1. 現代社会への理解を深める 日本史は、現在の日本の政治、経済、文化、社会の基盤となった出来事や人物を学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、現代社会がどのように形成されてきたのかを理解することができます。 2. 思考力・判断力を養う 日本史は、過去の出来事について様々な資料に基づいて考察する学問です。日本史を学ぶことで、資料を読み解く力、多様な視点から物事を考える力、論理的に思考する力、自分の考えをまとめる力などを養うことができます。 3. 人間性を深める 日本史は、過去の偉人たちの功績や失敗、人々の暮らし、文化などを学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、人間としての生き方や価値観について考え、人間性を深めることができます。 4. 国際社会への理解を深める 日本史は、日本と他の国との関係についても学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、国際社会における日本の役割や責任について理解することができます。 5. 教養を身につける 日本史は、日本の伝統文化や歴史的な建造物などに関する知識も学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、教養を身につけることができます。 日本史を学ぶことは、単に過去を知るだけでなく、未来を生き抜くための力となります。 日本史の学び方 日本史を学ぶ方法は、教科書を読んだり、歴史小説を読んだり、歴史映画を見たり、博物館や史跡を訪れたりなど、様々です。自分に合った方法で、楽しみながら日本史を学んでいきましょう。 まとめ 日本史を学ぶことは、私たちに様々なメリットをもたらします。日本史を学んで、自分の視野を広げ、未来を生き抜くための力をつけましょう。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...