注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

小説

死亡フラグが立ちました

死亡フラグが立ちました

走り梅雨の合間は買い物で忙しい。

ささっささっ

「ん?」

奇妙な音に、自転車の速度を緩める。

いつもなら、聴力障碍も抱えているから気が付かなかったりやり過ごしてしまったりする。

「きーーーーん」

でも、この日は朝から耳鳴りがして

絶不調の中を強いて動いていた。

こんな日は、小さな違和感も見逃したらダメなの。

死亡プラグが立っちゃうの。

だから、いつもならファミマまで突っ走ってしまうところをちゃんと自転車から降りて、

点検しようとした。

がらがらがらー

ざざどごっ

しゅぴるるる

駐車場のど真ん中に止めるわけにはいかないから、少し移動したら

訳の分からない轟音と共に自転車はひっくり返った。

前と後ろに載せている荷物は、フライングスタートのように走り出す。

しかも、四方八方に。

「こらこら、どこに行く」

めっちゃ恥ずかしい。

見ると、厚手のビニールでできたひも付きの袋がご丁寧に前輪のスポークにガッチリと絡み巻き込んでいる。

「うわー」

とりあえず、はじに移動させないと……。

こぼれ落ちた荷物を後に、そそくさと倒れた自転車を起こす。

そばにいた車からおじさんが出てきてくれて、荷物を拾い上げてくれている。

「大丈夫ですか?」

「ありがとうございます。助かります」

ベコンと頭を下げて、急いでばらばらの食材を拾いに行く。

「気を付けてくださいね。けがはありませんか?」

「はい、大丈夫です」

嬉しい―。みんな親切だね。

「ありがとうございました」

丁寧にお辞儀をした。


彩香は普通の17歳。高校2年生。

注意欠陥多動性障害(ADHD)で、毎日のように大ポカをする。

「前にもハンドルに荷物をかけて大事故になったよね?」

投げ捨てるように、彩香はぼやく。

何度も同じような失敗を繰り返す自分自身を受け入れることができない。

この厚手のビニールだって、バックの中で、

カード入れと小銭入れが年中紛れ込んで、

レジの前で大騒ぎになるからわかりやすいように自分で工夫して小分けにしたのに。

かえって仇になるなんて思ってもいなかった。

もう少し小ぶりの布製のものにしよう。

今度100円ショップで探してみよう。

できたら、キティちゃんだったら嬉しいな。

もうさっきの事故を忘れ、ニコニコにしてる。

ほんとにたまげるほど、鶏人間。

散歩歩くとすぐに忘れる。

誤字ですよー。

三歩歩くとの間違いです。はいっ。

ま、いいか。

やっちゃったもんは仕方ない。

それにしても、大惨事にならなくてよかった。

下手すると、マジで死亡フラグが立っていたよ。

「荷物を拾ってくださった方、ありがとう」

「神様、守ってくれてありがとう」