私の婚約者様は王女殿下の騎士をしている

私の婚約者様は王女殿下の騎士をしている

私の婚約者様は王女殿下の騎士をしている

私は婚約者を持っている。そう、王女殿下の婚約者だ。だが、私が彼に会うことはほとんどない。婚約者としての交流と言っても、それは名ばかりのものにすぎない。彼が忙しいのは知っているし、それが王女殿下の騎士という立場から来ていることも理解している。でも、どうしても心の中で浮かんでしまう疑問がある。彼は私を愛しているのだろうか？それとも、王女殿下への忠誠心から、私と結婚することに義務感を感じているだけなのだろうか？

病弱で美しい王女殿下に常に付き従う彼の姿を思い浮かべると、私の心は複雑な気持ちに包まれる。私と彼は、ただの婚約者同士の関係だ。彼が王女殿下の世話をするために毎日忙しくしていることはわかっているし、それをどうこう言うつもりもない。ただ、そんな日々が続いていると、私の心の中に少しずつ寂しさが積もっていくのだ。

私は王女殿下に嫉妬しているわけではない。彼女の美しさや優雅さに対して、特別な感情を抱いたこともない。むしろ、彼女が病弱であることを考えると、私には心から同情の念が湧いてくる。それでも、彼女が彼と過ごす時間を見ていると、どうしても彼の心が私に向いているのかがわからなくなる。私たちの関係は、形式的なものに過ぎないのだろうか？

今日も、彼は王女殿下のそばにいる。私は一人、静かな部屋で待つことになる。部屋の窓から見える庭の風景をぼんやりと眺めながら、私は自分の気持ちに向き合わせる。

「私はいったい、何をしているのだろう？」私は心の中で呟いた。どんなに待っても、彼は私の元にはやって来ない。王女殿下が病気でなければ、彼が私の元に来ることもあったかもしれない。でも、彼が彼女を助けるために毎日働く姿を見るたび、私は彼が私に対してどう思っているのかがわからなくなる。

彼が王女殿下に仕える騎士であり、私との婚約も義務感から来ているのではないかと考えることがある。その可能性は、否定できない。彼が私に対して心から愛情を持っているのか、それともただの義務感から私を受け入れているのか、私はそれを知る術がない。

ある日、思い切って彼に会いに行くことを決意した。王女殿下のことを気にしている彼が、私にどんな反応を示すのか、それを確かめたかった。

彼がいるのは王宮の騎士団の控え室だった。そこに足を踏み入れると、すぐに彼が私を見つけて立ち上がる。

「お前、どうしてここに？」彼は驚いたように言った。

「少し、あなたに会いたくて。」私は静かに答える。彼の目をじっと見つめながら、心の中で自分に言い聞かせる。彼に本当の気持ちを伝えるためには、今この瞬間が必要だ。

彼は少し戸惑っているようだが、すぐに目を逸らすことなく私に向き直った。「婚約者として、どうしても気になっていることがあるんだ。」

「気になること？」彼が不思議そうに私を見る。

「あなた、私を愛しているの？」思わず言葉が口を突いて出た。あまりにも唐突すぎた問いに、彼は一瞬言葉を失う。その目に浮かぶのは、戸惑いの色だ。

「もちろん、お前のことを愛している。」彼は少し固く答えるが、その表情には、どこかよそよそしさが残る。心のどこかで、彼の言葉が本当に真実なのか、私自身も信じきれなかった。

「本当に？」私は再び問いかける。彼が私に本心を伝えるのを待っている自分がいる。

「愛しているよ、だが…」彼は言葉を切る。「私は王女殿下の騎士としての誇りがある。私の忠誠心が、お前に対する感情に優先しているんだ。」

その言葉に、私は胸が締め付けられる思いがした。彼の愛は確かに存在する。しかし、それは彼の忠誠心に重なる部分が大きいのだと、私は理解せざるを得なかった。

「私には、それがどうしても納得できないの。」私は目を伏せながら言った。「私にとって、あなたの愛はただの義務感じゃないかと思うと、どうしても胸が苦しくなる。」

彼は何も言わず、しばらく黙っていた。私の目を見て、静かに息を吐いた。「分かるよ、だからこそお前に対して自分の気持ちをはっきり言うことができなかった。でも、心の中でお前を思い続けていることは事実だ。」

その言葉に、私は複雑な気持ちを抱えたままその場を立ち去った。婚約者としての義務感に縛られ、彼の心が私にどれだけ傾いているのかを確かめることができなかったからだ。

私は分かっていた。私の婚約者が王女殿下を想い続け、彼女のために尽力する姿を見守ることが、私にできる最良の選択なのだと。しかし、それでも心の中で、彼と私の未来に対する不安が消え去ることはなかった。