かまってちゃんをなおすには

つながりたいけど、つながれない

「つながりたいけど、つながれない」

「おなかすいたー♪」スマホの画面に文字を打ち込み、私はひとりごとのようにツイートする。昼間の陽が差し込む部屋で、テレビもつけず、ただスマホの画面をじっと見つめている。誰かが「いいね」してくれるのを待っている自分が、少し情けなく思えてきた。

ツイッターを開けば、タイムラインには「界隈」とか「タイパ」「スパダリ」といった単語が飛び交っている。言葉の意味がよく分からなくても、とにかく流行に乗っている気がする。まるで、自分がその世界に溶け込んでいるかのような錯覚に浸れるからだ。

「かまってほしいな」心の中で呟いて、またスマホに手を伸ばす。「ご飯炊こうよ💕」と書いて投稿する。フォロワー数は11649人。なのに、本当はひとりぼっちだという感覚がぬぐえない。ツイートをしても、通知がピコピコと鳴るわけでもなく、ひっそりとした画面のままだ。見てくれる人はいても、誰かが本当に気にかけてくれるわけじゃない。

「界隈」って何だろう？つながりを求めて同じ趣味や話題で集まること？そうしてできた仲間の中での交流。けれど、その中に私が含まれている気がしない。リアルな友達もいないわけではないが、こうした「界隈」でつながっている人たちと本当に話したことなんてない。私が一方的に彼らの投稿を見て、いいねを押しているだけの関係。それなのに、なぜかつながっているような気がしてしまう。

「マジで寂しみが深い…」また一人で呟いた。そして気づけば、画面を見ながら「わたしはあなたが大好きです❤️」と、見ず知らずのフォロワーに向けてツイートしてしまっていた。誰かに届いてほしい、気にかけてほしい、そんな気持ちが膨らんでいたのかもしれない。

しばらくして、スマホが鳴る。通知を見ると「いいね」が一つついていた。それだけで少し心が軽くなった気がする。けれど、次の瞬間にはまた虚しさが押し寄せてきた。「誰も私を知らない…ただの文字の羅列だけで、誰かとつながっていると思っているだけなんだ」

心にぽっかりと空いた穴は埋まらないまま、私はさらに「寂しいのかな？」と続けてツイートした。誰かがそれを見て、何か返事をくれるだろうか？ひとりぼっちのかまってちゃんなんて、ただの自己満足でしかないのかもしれない。それでも、誰かが気づいてくれるのを期待してしまう自分がいる。

しばらくしてフォロワーの一人からリプライが来た。「ご飯炊くのいいね！何かおいしいもの作ってみたらどう？」それだけの短いメッセージだったが、私は少しだけ心が温かくなった。画面の向こうにいる誰かが、私の言葉に反応してくれたのだ。

「ありがとう、作ってみる！」と返信して、私はようやく炊飯器のスイッチを押した。小さなことだけれど、誰かが自分を気にかけてくれていると思うだけで、ほんの少し生きることが楽に感じられた。

炊き上がるまでの間、またツイッターを眺める。誰かが書いた「ぜっき」「バ先」という言葉に、「バイト先のことかな？」と思いを巡らせる。何気ない言葉が、こうしてたくさんの人の中で使われているだけで、自分もその輪の中にいるような気がするのだ。

「ラーメンにしようかな？」と自分でも冗談のようにツイートしてみた。案の定、数人が「それいいね！」と反応してくれた。みんな、ただの一言に反応してくれる優しい人たち。けれどその反応が一時的なもので、誰も私の本当の寂しさを知っているわけではないことも、わかっている。

画面の中の「つながり」は、リアルのそれとは違うものだ。瞬間的な「いいね」や「リプライ」に喜びを感じながらも、その向こう側には自分の孤独が待っている。スマホを置いて部屋を見渡せば、やはり私はひとりぼっちだ。

けれど、それでもいいかもしれない。たとえ一時的なつながりでも、画面の中にいる誰かが、私の言葉に少しでも反応してくれるなら、それで私は生きていけるのかもしれない。