かまってちゃんをなおすには

変動する心の海

変動する心の海

夜の静寂の中で、私はひとり部屋の隅に座っていた。窓の外では、街灯が薄暗く光り、静かな夜が広がっている。しかし、その静けさの中に、私の心は嵐のように波立っていた。感情が激しく揺れ動き、何を思えばいいのか、何を感じればいいのかさえわからない。

朝からずっと、私は自分の気分に振り回されていた。朝目覚めた瞬間、世界は明るく見えた。昨日の悩みもどこかへ消え去り、私は無敵のような気持ちになった。それでも、昼を過ぎると次第にそのエネルギーは消え、突然の不安が心を支配し始めた。些細なことに過敏になり、全てが無意味に思えた。そして夕方には、怒りと悲しみが入り混じった感情が湧き上がり、もう何もかもが嫌になった。何もかもがうまくいっていないように感じて、泣きたくなる。

「また、今日もこうだ……」

私は深いため息をつきながら、壁に背を預けた。この不安定さが、私の日常の一部になってしまっていることが、ますます辛く感じる。どんなに努力しても、感情の波が激しすぎて、平穏な日々を送ることができない。

１

幼い頃から、私は自分の感情が急激に変わることに悩まされてきた。幸せな瞬間もあれば、突然に不安や恐怖に襲われることもあった。周囲の人々はそれを理解しきれず、時には「大げさだ」と言われたり、「もっと落ち着けばいいのに」と諭されたりした。しかし、私にとっては、その「落ち着く」ということがどうしてもできなかった。感情が次から次へと押し寄せ、どうしてもその波に飲み込まれてしまうのだ。

学校では、周りの友達ともうまく関係を築けず、感情的な不安定さから自分の気持ちをうまく表現できないことが多かった。些細なことで友達と喧嘩をしてしまい、その後は何も手につかなくなる。怒りや悲しみが心にこびりついて、何もできなくなることがよくあった。

「なんでこんなに自分は変わってしまうんだろう？」

自分の心の中の不安定さを感じるたびに、そんな思いが頭をよぎる。たった数時間の間に、気分がこんなに変わってしまう自分を、どうしても受け入れられなかった。自分が望むのは、穏やかで安定した日々だけだった。

２

職場でも同じことが繰り返される。午前中は、同僚たちと笑顔で話していたのに、午後になると急に体が重く感じ、集中力が失われる。些細なことで気持ちが沈み、全てがうまくいかないような気がしてくる。その瞬間、周りの人たちの言動がすべて自分を攻撃しているように感じ、心が震える。

「また、怒ってるみたいに見えるんじゃないか？」

その思いが頭をよぎるたびに、胸が締め付けられる。自分の感情をコントロールできないことが、他人にどう映るのかが怖かった。周りの目を気にしながらも、内心ではその不安定さを必死で隠そうとしていた。

ある日、上司から突然の評価をもらった。少し驚いたが、同時にほっとした気持ちが広がった。しかし、その後の会議で、自分の意見を言うときに突然、怒りが湧き上がった。その理由がわからなかったが、他の人たちの言葉が胸に刺さるように感じた。その瞬間、言葉が次々とこぼれ、何も考えずに話していた。

会議が終わった後、私は自分がしたことを反省した。どうして、あんなにも感情が暴走してしまったのだろうか。後悔の気持ちが湧き、自己嫌悪に苛まれた。

３

家に帰ると、また不安定な気持ちが私を包み込む。心がふわふわと浮遊し、現実感がなくなっていく。夜になると、いつも以上に気分が沈んでしまうことが多い。全てが無意味に思え、ただひたすらに自分の中の不安と戦っているような気分になる。

「どうして、こんなにうまくいかないんだろう。」

自分の感情をどうにかしたい、そう思いながらも、どうしてもその波から逃れられない。次第に体も疲れ、動けなくなる。人との接触を避け、ひとりでいる時間が長くなっていく。友達からの連絡にも反応できず、電話をかけることもできない。

そのとき、突然、心の中に小さな声が聞こえた。

「大丈夫、ちゃんと向き合っているじゃないか。」

その言葉に、少しだけ救われた気がした。感情の波に飲み込まれ続けても、私が心の奥で何かを感じ取っている限り、それはまだ終わりではないのだ。自分を責めることなく、少しでも向き合っていけば、きっといつか、少しずつでも安定した気持ちを取り戻すことができるのだろうか。

そう信じながら、私は今日もまた、感情の不安定さと向き合っている。