僕はもふもふのジュリアーノ

春秋花壇

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僕はもふもふのジュリアーノ　池袋大戦争

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「死ね」

「バカヤロー」

「お前なんか、生きる資格なし」

「バーカ」

「逝ってよし」

壁中書きなぐられた落書き。

ここは公園のトイレではない。

ママたちが住んでいる家賃16万円のマンションだ。

その白いエレベーター前の壁は、落書きだらけ、

ご丁寧に、血をまねるために赤茶色のペンキで

血のりの模様まである。

「はー、近頃の中学生は」

ママは、それを見ると大きくため息をつく。

それでも、少年は、最初登校していた。

それが途中で帰ってくるようになり、

ついには登校しない日が続く。

ママの頭痛は息をするのもつらいほど、

ひどいものになっていく。

軽い気持ちで、気晴らしでもしたかったのだろう。

FFのイージータイプのゲームカセットとゲーム機器を買ってきた。

記憶はないのだけど。

ママの病気の解離性健忘の症状なのだろうか。

ところが、少年の病気は、それを見るなり、

再発してしまう。

少年は、朝から晩までゲームをするようになり、

不登校当たり前。

と、言う状態になる。

塾には通っていたので、家庭教師を雇ったり、

聖書研究をしたりして、

何とか、この嵐のような時期を過ごそうとするのだが、

少年の状態はどんどんひどくなる。

そして、パパさんのお財布からまたお金を盗むようになった。

あんなに、神に

祈願、嘆願、懇願、請願したのに、3年と持たなかった。

本当に愚かで不完全な人間。

そして、どんどん悪化の一途をたどる。

ママは、慌てて教育委員会と連絡を取り、

少年を連れて、一週間に一回、少年の指導をしてもらう。

少年の背はどんどん伸びて、ママを追い越しそうな雰囲気なのに、

心は育っていないのだろうか。

まるで、麻薬患者のようにゲームに引きずり込まれてしまう。

それはまさに、ゲーム依存症そのものの症状だった。

でも、あの頃、国立の精神科に連れていって、

状況を説明しても、

ゲーム依存症なんて病気はないと一蹴されてしまう。

ママは疲れ果て、少年を殺して自分も死ぬことばかりを考え始めていた。

パパさんは、ママたちが引っ越して来る前に、

誰かから高価なウイスキーをもらっていた。

飲みかけだったのだが、ご丁寧に

家具の上に隠してあった。

ママはそれを以前から知っていた。

その時には、お酒をやめて6年くらいたっていたし、

まさかそれに手をつける日が来るなんて予想もしていなかった。

その日は、少年と教育センターに行く日だった。

ところが、何時になっても帰ってこない。

ママは仕方なく、教育センターに電話を入れ、

予約を断った。

外に探しに行くと、少年は学校の友達と楽しそうにしていた。

注意をして、帰宅したのだが、

帰ってきた少年はいつになく、反抗的な態度だった。

ママの主症状の解離は昔、ヒステリーと呼ばれた病気である。

怒りに対してものすごく弱い。

びっくりするほど、反抗的な態度に激怒してしまう。

気性の荒い別人格のママは

「上等だ。こら。そこまでいうなら、やくざの事務所当番にでも雇ってもらうから、

てめえで食っていけ」

と、怒鳴った。

アルコール依存症者にとって、

HALTは命取り。

アルコール依存症、薬物依存症など、依存症の回復過程で気をつけること。

Hungry：空腹
Angry：怒り
Lonely：孤独
Tired：疲労
こんなとき、再飲酒や再使用が起きやすいと言われています。強くなるより賢くなれ。

子供情報ステーションより引用

ママは怒り狂うと、パパさんの残していたウイスキーをコップにつぐと、

ごくごくと飲み干してしまった。

さー、ここからが地獄の始まりである。

It's Showtime

僕はジュリアーノ。マルチーズ。

かつて、ママに飼われていた。

今は、お空のお星様。

ママを守るためにここにいる。

まさに、やめたその瞬間にワープしてしまう。

6年間もやめていたのに。

最飲酒してしまったというショックは多分、

普通にはわからないと思う。

4LDKの家まで売って、リハビリをしたのに、

元の木阿弥。

さすがの僕も絶句。

ママは、酔っ払って洋服を着たまま、風呂場に行く。

そのまま湯船に座り込み、

シャワーを出して、歌を歌っている。

「からす　何故なくの　からすはやまにー」

もう気が狂ってるとしか思えないような状態だった。

それを見て、少年もお嬢ちゃんも泣いている。

クリスチャンの兄弟姉妹に連絡して、助けを求める。

こんな状態になっているのに、的確な指示が出来る人は誰もいなかった。

それほど、あの頃はアルコールやメンタルな病気に対して、

知識のある人はいなかった。

いまなら、できるだけ子供たちが直接影響を受けないように、

隔離することだろうか。

問題のあるところからは距離を置く。

共依存にならないように配慮する。

子供たちが適切な保護が受けられるように考える。

いろんな方法はある。

今は本当に素敵な時代。

ネットを開けば、経験のないものも知識、知恵を得ることができる。

あらゆる場所に相談の窓口がある。

ありがたいことですよね。

池袋大戦争はこれから、終局に向けて息を弾ませる。

できることなら、これ以上、少年やお嬢ちゃんが壊れないですみますように。

読んでくださってありがとうございます。

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