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僕はもふもふのジュリアーノ 悪魔の子
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「奇跡だー」
ママは躍り上がっている。
小躍りしてる。
歓喜している。
なんと、少年はあの聖書研究者の人が来て、
「わたしの聖書物語」
を買ってとねだって買い与えてから、
一日も休まず学校に行くようになったのだ。
お嬢ちゃんと一緒になって、
手をつないで喜んでいる。
「にいにが変わった」
「神様、ありがとうございます」
施設では、とんでもないことが起きたと
緊急スタッフ会議。
シスターも神学生も交えて、
少年を施設に移住させなくて本当にいいのか、
話し合われたのである。
初めは、誰もどうせ続きはしないとたかをくくつていた。
こうなると、人間は面白いもので、
少年が幸せになることよりも、自分の考えが正しかったことを
立証したいと躍起になる。
不思議だねー。面白いねー。
少年は、聖書研究者たちが主催するすべての集会を支持し始める。
聖書をこつこつ読み、調べ、黙想し、適応しようとする。
人が変わったように。
まるで、長年道を捜し求めていた人が、
道を探し当てたように。
水を得た魚のように。
いきいきと、はつらつと、明るく、楽しそうに。
「まさに奇跡」
1ヶ月くらい続いたとき、
施設長は少年をはぐしようとした。
ところが、少年はするっと逃げた。
施設長は勢いあまって、そのまま胸からこけた。
「うっ」
ちょっと痛かったらしい。
まさか、肋骨にひびが入ったなんて誰も思わなかった。
痛みがひどいので、病院で見てもらうと
骨にひびが入っているといわれたらしい。
「悪魔の子」
なんてひどい言葉。
そして、この施設では施設長の言葉、考え=施設の意向である。
この日を境に、少年に対して腫れ物に触るような異臭を放つものとして扱われる。
僕はジュノーリアーノ。マルチーズ。
かつて、ママに飼われていたの。
今はお空のお星さま。
ママを守りたくてそばにいるの。
ママは、聖書研究者と聖書研究を始め、
だめはだめ、いいはいい、一貫性のある躾を始める。
そして、お祈りをするとき、自分の願いではなく、
神のご意思が行われることを願い求めるようになったのである。
あの頃のことを少年は、ママはまるで別な人になったという。
毅然としていて、美しかったと……。
散々お世話になったのに、後足で砂をかけるようになることを
初めは懸念していた。
しかし、もうそれしか道はなかった。
「この道を行く」
子供を守るために。
必死の決断だったのだ。
母親って強いですよね。
世界中を敵に回しても、わが子を守ろうとするその姿に
少年も同調し、その生きかたを改めた。
少年も頭痛がひどかったり、吐いたりしていたのだが、
一日も休まないで必死に学校に行った。
とりあえず、登校する。
行ってどうしてもだめだったら、
帰ってきていいんだからと
出かけていくのだった。
それでも、以前の生き方はひょこひょこ顔を出すのだが、
気づくたびに素直に改めようとした。
たとえば、少年は、物やお金で友達を作ろうとするのだが、
その度に注意が与えられ、すなおに適応して改めた。
家族4人が一丸となって、新しい生きかたを受け入れたのだ。
そして、感謝と笑顔に満たされて、
貧乏ながらもその生活を心から楽しんでいった。
クリスチャンの兄弟姉妹との付き合いも増え、
その考え方、生き方の差に驚かされるのだった。
「神様、あなたが言っていた逃れ道ってこれだったんですね」
ぼくは、ただただ驚いていた。
人がこんなにも変われるのかと思うほど、
みんな真剣だった。
だれもが、このまま幸せが続くと思っていた。
週末のパパさんとの団欒もふくめて、
必死だったのだから。
でもねー……。
読んでくださってありがとうございます。
ママは躍り上がっている。
小躍りしてる。
歓喜している。
なんと、少年はあの聖書研究者の人が来て、
「わたしの聖書物語」
を買ってとねだって買い与えてから、
一日も休まず学校に行くようになったのだ。
お嬢ちゃんと一緒になって、
手をつないで喜んでいる。
「にいにが変わった」
「神様、ありがとうございます」
施設では、とんでもないことが起きたと
緊急スタッフ会議。
シスターも神学生も交えて、
少年を施設に移住させなくて本当にいいのか、
話し合われたのである。
初めは、誰もどうせ続きはしないとたかをくくつていた。
こうなると、人間は面白いもので、
少年が幸せになることよりも、自分の考えが正しかったことを
立証したいと躍起になる。
不思議だねー。面白いねー。
少年は、聖書研究者たちが主催するすべての集会を支持し始める。
聖書をこつこつ読み、調べ、黙想し、適応しようとする。
人が変わったように。
まるで、長年道を捜し求めていた人が、
道を探し当てたように。
水を得た魚のように。
いきいきと、はつらつと、明るく、楽しそうに。
「まさに奇跡」
1ヶ月くらい続いたとき、
施設長は少年をはぐしようとした。
ところが、少年はするっと逃げた。
施設長は勢いあまって、そのまま胸からこけた。
「うっ」
ちょっと痛かったらしい。
まさか、肋骨にひびが入ったなんて誰も思わなかった。
痛みがひどいので、病院で見てもらうと
骨にひびが入っているといわれたらしい。
「悪魔の子」
なんてひどい言葉。
そして、この施設では施設長の言葉、考え=施設の意向である。
この日を境に、少年に対して腫れ物に触るような異臭を放つものとして扱われる。
僕はジュノーリアーノ。マルチーズ。
かつて、ママに飼われていたの。
今はお空のお星さま。
ママを守りたくてそばにいるの。
ママは、聖書研究者と聖書研究を始め、
だめはだめ、いいはいい、一貫性のある躾を始める。
そして、お祈りをするとき、自分の願いではなく、
神のご意思が行われることを願い求めるようになったのである。
あの頃のことを少年は、ママはまるで別な人になったという。
毅然としていて、美しかったと……。
散々お世話になったのに、後足で砂をかけるようになることを
初めは懸念していた。
しかし、もうそれしか道はなかった。
「この道を行く」
子供を守るために。
必死の決断だったのだ。
母親って強いですよね。
世界中を敵に回しても、わが子を守ろうとするその姿に
少年も同調し、その生きかたを改めた。
少年も頭痛がひどかったり、吐いたりしていたのだが、
一日も休まないで必死に学校に行った。
とりあえず、登校する。
行ってどうしてもだめだったら、
帰ってきていいんだからと
出かけていくのだった。
それでも、以前の生き方はひょこひょこ顔を出すのだが、
気づくたびに素直に改めようとした。
たとえば、少年は、物やお金で友達を作ろうとするのだが、
その度に注意が与えられ、すなおに適応して改めた。
家族4人が一丸となって、新しい生きかたを受け入れたのだ。
そして、感謝と笑顔に満たされて、
貧乏ながらもその生活を心から楽しんでいった。
クリスチャンの兄弟姉妹との付き合いも増え、
その考え方、生き方の差に驚かされるのだった。
「神様、あなたが言っていた逃れ道ってこれだったんですね」
ぼくは、ただただ驚いていた。
人がこんなにも変われるのかと思うほど、
みんな真剣だった。
だれもが、このまま幸せが続くと思っていた。
週末のパパさんとの団欒もふくめて、
必死だったのだから。
でもねー……。
読んでくださってありがとうございます。
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