僕はもふもふのジュリアーノ

僕はもふもふのジュリアーノ 別れ

シングルマザーで生んだ君
つらい悲しい想いを
沢山させてごめんね
君のために買ったおうちも
差し押さえられちゃって
それでもそばにいてくれて
いつもナイトをしてくれる
無理しなくていいんだよ
子供らしくていいんだよ
相談相手にならなくていいんだよ
役割錯誤しなくていいんだよ
それでも優しい君は
ママ泣かないでって
涙をぬぐってくれる
ごめんね
本当にありがとう

僕はもふもふのジュリアーノ　

お空の星になったんだ。

ママが好きだから、ママをずっと見守っている。

妊娠してるのに、ずっとママの出血は止まらなかった。

ある日、ご近所さんと井戸端会議をしていると、

野良犬がいたんだ。

結構、汚れていて、きれいじゃない犬。

首輪もしてないの。

ママは、犬の目をじっと見て、

「今日から、君の名前はゼロ」

「ゼロ、おいで」

そしたら、ゼロはママになついた。

ご近所さんは、

「えええええええ」

って。

そんな雑種の汚い犬。

見向きもしないのにね。

ママは、外のホースでゼロをジャブジャブ洗って、

ブラッシングしてふわふわの犬にしたんだ。

そして、えさをあげたの。

みんなびっくりしてた。

洗ってみると、結構素敵な犬で、

おとなしくて、利口で。

ゼロは、パパさんが猛反対するから、

外で餌をあげてた。

一応、この家のご主人はパパさんなので、

飼わないということになって餌はあげてもいい。

お世話もしてもいいということで話は落ち着いたんだ。

1ヶ月くらいいたのかな。

ママは、次の日がお父さんの命日で、仏壇にお花を買ってきたの。

ママがお花を飾っていると、外が騒がしい。

見ると、ゼロが走り回ってる。

言い忘れたけど、ここは畑が沢山あるの。

ゼロは、畑のあぜ道を狂ったように走り回っていた。

ぐるぐるぐるぐる。

そして、しばらくすると、パタッと倒れて死んじゃった。

「ええええええええええ」

近所のおじさんが、

「たぶん、畑に蒔いてあるモグラの農薬を食べたんだろう」

って。

ママは、保健所に連絡すると、犬を連れて行ってもらって、

またずっと泣いていた。

どうして、この人の周りはみんな死んじゃうんだろう。

ママのお母さんがすい臓がんで、痛みと闘いながらるいそうで

がりがりにやせ細って、壮絶な死を遂げた後、

ママの二人の子供も死んでいる。

そして、僕が死んで、今度はゼロ。

ママの涙の乾く暇がないね。

世界中の不幸がここに集まっているのかと思うほど、

問題の集合体。

必死でリハビリしてるのに、

パパさんの結婚前の連帯保証人で、

ママの買った家は抵当に取られちゃうし、

パパさんは一円もお金を渡さなくなるし、

少年は非行に走って。

ママは休む暇もない。

妊娠して喜んでいれば、前置胎盤で親子ともども

命も危ないという。

「神様、どうなってるの」

「大丈夫、逃れ道はある」

ママのお母さんが死ぬ前にママに

「生きていることの99か98はつらく悲しいことばかり。

でも、たった1つか、2つ。楽しいことがあって、

そしれを本当に楽しみに生きていくんだ」

って。

みんな笑っているのに。

幸せそうなのに。

ほら、お隣の家の坊やがお父さんとキャッチボールをしているよ。

少年は、キャッチボールさえしてもらったことがなかった。

それでも、顔を洗って鏡を見て、

ママを守るってにこって笑うんだ。

少年、負けないで。

ママ、負けないで。

僕はいつでもそばにいるよ。


読んでくださってありがとうございます。